呼吸器内科

免疫療法

免疫療法とは?

免疫療法の歴史は古く、外科手術、化学療法(いわゆる細胞障害性抗がん剤)、放射線療法、分子標的治療薬といったがんの治療モダリティーとして考えられてきました。免疫治療は、自身の免疫力を賦活化することにより、がんを自己の免疫細胞が攻撃し、縮小させるような機序が考えられてきました。実際、腎がんに対するサイトカイン療法が診療で行われてきました。しかし、ワクチン療法に代表される免疫治療はいずれの臨床試験ではその効果を検証することはできませんでした。
2010年ころに悪性黒色腫については免疫チェックポイント阻害剤の目覚ましい効果が示され、また、非小細胞肺癌でも治療開発が進み、2015年より本邦でもニボルマブが承認されました。現在、米国ではニボルマブに加え、ペムブロリズマブ(本邦では承認済み)、アテゾリズマブが未治療および再発性非小細胞肺癌に承認をされております(薬剤により適応が異なります)。現在、多彩な進行がんに対し、奏効が確認され、臨床的な効果が検証されており、適応が拡大されております。

どのようにすれば、免疫療法を受けることができますか?

今日、新規免疫療法は単剤のみではなく複数の免疫療法との組み合わせや細胞障害性抗がん剤などの従来の抗がん剤との組み合わせが治験で実施されており、治療の進歩が期待されております(臨床試験について:http://www.cick.jp/kokyuukinaika/clinicalstudy/)。当院では国立がん研究センター中央病院、がん研有明病院と意見・情報交換などを行い、診療の共有と患者さんの相談などをできる状況となっております。

肺がんに対する免疫療法について

免疫療法は、抗がん剤とは異なり、薬剤が直接的にがん細胞ないしは微小環境に作用して効果を発揮するのではなく、免疫細胞が肺がん細胞を攻撃できないような状況(免疫寛容)の患者さんに対し、免疫寛容の状態を解除するための薬剤(抗体薬)を投与し、抗腫瘍効果を期待します。免疫療法の目的は可能な限り腫瘍の増大を制御し、生活の質を維持することが目標となります。このような意味では、従来よりある細胞障害性抗がん剤と分子標的治療薬と同様となります。また、副作用についても重度の副作用の発現頻度は少ないものの、抗がん剤や分子標的治療薬と同様にあり、死に至るような副作用も報告されております。このため、入院や検査が24時間可能で、専門医のいる病院のみでの治療に限られており、薬剤の流通も制限されております。免疫療法へのいくつかの方法は、利用可能なものから現在臨床試験中のものもあります。現在、肺がん領域で有効であると検証されている薬物療法は免疫チェックポイント阻害剤のみとなっております。

免疫チェックポイント阻害剤

がん細胞がPD-L1という分子を発現することで、自身のTリンパ球からの攻撃を回避することでがんが増殖することができる状況の患者さんがいます。このため、Tリンパ球が発現しているPD-1という、がん細胞のPD-L1と結合することにより免疫細胞による攻撃を回避することができる分子に抗体薬が結合することで抗腫瘍効果を示すことができると考えられております。このようなコンセプトのもとに開発された薬剤が抗PD-1抗体としてしられる、ニボルマブおよびペムブロリズマブです。各薬剤の使い分けは治療ライン、組織型、腫瘍におけるPD-L1の発現ステータスにより推奨が異なります。
ただし、がんの原因は多様であるため、それに当てはまらない患者さんには全く効果がでないことが考えられます。また、併存症や健康状態により治療を差し控えざるをえない患者さんがいらっしゃいます。

免疫チェックポイント阻害剤の副作用は、開発からの歴史がまだまだ浅く、未知の副作用も考えられます.しかし、一方で従来の化学療法(細胞障害性抗がん剤、分子標的治療薬)に比べて副作用が少ないと考えられます。しかし、これまでの化学療法とは作用が異なることと、薬剤の特性から副作用がどの時期に生じるか予測がつかないことが注意点となります。投与直後に生じることや、投与開始後、数週間から数カ月後、年単位で生じることもあります。投与終了後、数カ月後に発現することもあります。また、思わぬ部位に副作用が出ることがあります。副作用が出たさい、その副作用に対して適切な治療を受ける必要があります。医師や薬剤師、看護師などに副作用についてよく確認してください。
副作用の種類は多岐・多臓器に渡り、疲労、倦怠感、発熱、食欲不振などの症状から、皮膚障害、肺障害(薬剤性間質性肺炎)、肝・胆・膵障害、胃腸障害、腎障害、神経筋障害、内分泌障害、眼障害、輸注反応(インフュージョン・リアクション)などが挙げられます。

その他、下記免疫治療が開発中ですが、肺癌領域では治験・臨床試験以外では保険での治療がされていない、つまり、安全性および効果については既存の薬物療法と比較し、効果が検証されていないと考えています。

世代(開発年代) 治療法 薬剤
第1世代(1970年代)
  • 免疫賦活剤(BRM)
  • 丸山ワクチン
  • ピシバニール・クレスチン
  • レンチナン
  • ハミスワクシン
第2世代(1980年代)
  • サイトカイン療法
  • インターフェロンα
  • インターロイキン2
第3世代(1980年代)
  • 活性化リンパ球療法
  • NK細胞療法
 
第4世代(1980年代)
  • 樹状細胞ワクチン療法
  • ペプチドワクチン療法
  • キメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子改変T細胞療法
 

※BRM:Biological Response Modifier

これら治療については、治療を受けること自体は患者さんの自由意思(自己責任)に基づいて行うことはそれを妨げることはありません。しかし、下記点を考慮してください。

① 治療効果が証明されているかどうか?

免疫療法の開発の歴史は数十年に及びますが、理論通りに効果が検証されないのには、効果を発揮すると考えられる標的以外にもさまざまな体内環境、免疫関連分子などがあります。また、マウスによる実験についても、ヒトとマウスの生物学的な違いや、実験で使用されるがん細胞側の要因があります。
その薬剤が保険で使用されていない理由は、①そもそも効果がない、②ドラッグラグ(米国ではいち早く承認されているが、本邦では承認が遅れている)、③海外では効果が検証され、承認されているが日本人には効果が乏しい、など様々な理由が考えられます。

② 保険診療か、治験治療か、自由診療か

  • 保険診療で受けられる免疫チェックポイント(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)
  • 治験や先進医療などに保険外併用療養費制度での利用
    (臨床試験について:http://www.cick.jp/kokyuukinaika/clinicalstudy/
  • それとも全額治療費を支払う自由診療(自費診療)となる治療法。当院では実施しておりません。また、他院で生じた副作用については原則、治療を行いません(提携している診療機関で治療をお受けください)。
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