肝臓内科

当科の臨床研究

肝硬変とは?

肝臓の組織が硬くなり、本来の働きをしなくなってしまう病気です。肝細胞の障害と線維成分の著しい増加によって、肝臓が硬化縮小してしまう状態になります。
B型肝硬変はB型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus:HBV)、またC 型肝硬変はC 型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus:HCV)の持続感染に起因する慢性肝炎から進展した病態です。HBV/HCV感染による持続的な肝障害の結果、慢性肝炎が認められるようになりますが、この病期にHBV/HCVの排除が達成されない場合、肝炎による肝細胞壊死に続き肝線維化を生じ、線維化の進行とともに肝硬変に至り、その後の肝細胞がんの発症や肝不全への進行が問題となっています。

右記URLもご参照下さい。https://www.cick.jp/column/archives/443

HCV感染

慢性肝炎

肝硬変治療薬について

肝硬変の治療には、代償性肝硬変の場合は、ウイルスの排除を目指す直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals:DAAs)による抗ウイルス療法が行われ、ほぼウイルス排除(血中HCV-RNA持続陰性化 [Sustained Virological Response:SVR])が可能となっています。しかしながら、ウイルス を排除出来た場合であっても、一旦確立された肝線維化は改善するには時間を要し、ウイルスが排除されたにもかかわらず、肝細胞がんの発症例が少なくないことが報告されています。非代償性肝硬変の場合も2019年2月からは、DAAsが保険適用となりました。しかし、代償性肝硬変と同様にウイルスが排除できたとしても肝硬変を改善するには時間を要することが報告されています。

PRI-724(OP-724)について

PRI-724(新開発コード:OP-724)は、Wntシグナル伝達を阻害し、β-カテニンとCBP [CREB(cyclic AMP 応答配列結合タンパク質)結合蛋白]の蛋白相互作用を選択的に阻害できる新規の低分子化合物です。活性分子種C 82のプロドラッグ(体内で代謝されてから作用を及ぼすタイプの薬剤)で、生体内でC-82に変換されたのち、CBPとβ-カテニンとの相互作用を阻害し、Wntシグナル伝達経路の不可欠な転写ステップを停止させることによって作用します。

がん細胞

開発の経緯について

肝硬変の本質である線維化にWntシグナルが関与していることが最近報告され、抗線維化治療の標的としてWntシグナルが注目されていますが、当院 肝臓内科の木村医師らは、PRI-724が肝硬変マウスモデルに対して抗線維化作用を有することを見出しました。四塩化炭素(CCI4)を投与することにより、持続的な急性肝炎を生じ肝線維化が形成されますが、PRI-724の投与により線維化が改善しています(EBioMedicine 2015)。

開発経緯

国内の治験状況について

抗線維化治療薬の開発は、現時点で治療薬がないとされる進行した肝線維化状態からの回復による肝機能の改善、肝硬変に伴う様々な合併症の改善、肝細胞がんの発症予防が期待されることから、必須であると考えられていますが、肝硬変マウスモデルで抗線維化効果が認められたことから、木村医師らは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、日本人のC型肝炎ウイルスに起因する肝硬変の患者さんを対象とした医師主導国内治験(下図:治験実施計画)を2014年から2016年度にかけて実施しました。

抗肝硬変

 

国内先行治験の結果について

完了した治験の結果から、治験薬投与後の患者さんの生検肝組織像の所見では、肝細胞周囲の細網線維の減少(下左右図・下中央図)が認められました。

PRI-724_1PRI-724_2

また、臨床経過の観察では血清アルブミン値の上昇など、タンパク質合成能の改善(下図)も確認されました。

治験薬投与後

さらに現在の治療では不可逆とされている Child-Pugh分類(肝臓の障害度を表す指標:下参考図参照)BからAへの改善が、複数の投与患者さんで確認されています(下中央図「有効性まとめ」参照)。これらの症例は全例経口抗ウイルス薬治療を開始後にSVR12(服用終了12週後の血中HCV-RNA持続陰性化)を達成し、現在も順調な臨床経過が認められています(EBioMedicine 2017)。

Child-Pugh分類

                     (参考図)

Child-Pugh分類

現在および今後の治験計画について

先行したC型肝硬変の患者さんに対する治験の結果を詳細に解析・検討した結果、PRI-724によるC型肝硬変に対する線維化進展抑制作用及び線維溶解作用が示唆されましたので、これらの治験結果を踏まえて再びAMEDの開発支援を受け、当院、九州大学病院、国立国際医療研究センター国府台病院の3施設で、対象を広げてC型やB型肝硬変の患者さんにPRI-724を投与したときに患者さんにとって好ましくないことが起こらないか、どうかといった安全性と、患者さんの肝臓の線維化が改善するかどうかの有効性をさらに検討する治験を実施しています。本治験によって、PRI-724がC型肝硬変やB型肝硬変の患者への有効な治療薬となることを目指しています。

 

研究成果について

C型肝硬変治験の成果を2016年11月ボストンで行われた世界最大の肝臓関係の学会であるアメリカ肝臓学会(AASLD)で口頭発表し、今後期待される注目すべき臨床研究の一つに採択されました。また2017年にはAASLDからC型肝硬変治療薬の開発に関する取材を受け、取材Videoは2017年10月にワシントンで行われたAASLDで紹介されました。
取材Videoは下記URLのサイトをご覧下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=4CnEwNSRCuY&list=PL9CZabk3nD4HrbMaDLTLlgXAh1aFRWVsR&index=23&t=0s

https://www.youtube.com/watch?v=Bl-nQEAG2dU

Dr.kimura

また、C型肝硬変治験の成果は海外の学術雑誌「EBioMedicine」に、2017年9月に発表されています。
詳しくは右記URLをご覧下さい。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28844410/

さらに2018年12月20日発行の「Nature Outline」*)で、木村医師が進める新規肝硬変治療薬開発に関する研究成果と取組が紹介されました。
詳しくは、下記URLをご覧下さい。

・PRI-724(OP-724)について
https://media.nature.com/original/magazine-assets/d42473-018-00371-y/d42473-018-00371-y.pdf

・肝硬変の概要
https://media.nature.com/original/magazine-assets/d41586-018-07759-2/d41586-018-07759-2.pdf

また、研究内容をグラフィック付きで分かりやすく説明した動画もYouTubeで配信されています。
https://www.youtube.com/watch?v=a0d1yvGcfzQ

*)【Nature Outlineについて】
Nature Outlineは、国際的な総合科学ジャーナルである「Nature」の綴じ込み付録として、
編集記事とインフォグラフィック、アニメーションで科学、技術、医薬のアプリケーションを説明
する新しい企画です。

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