肝臓内科

専門分野

肝臓ってどんな臓器?

肝臓は人間の臓器のなかで一番大きな臓器で、おなかの右上で肋骨に保護されています。重量は成人で約1200~1500gであり、いろいろな物質の代謝、解毒や合成を行っています。肝臓病の初期は自覚症状に乏しく、肝臓特有が現れにくく“沈黙の臓器”と言われています。このため、肝臓病の早期発見には血液検査や画像検査(超音波やCT)などが必要です。

肝臓の病気は?

肝臓には様々な病気があります。

1)肝炎ウイルスによるもの

肝炎ウイルスとは肝細胞の中で増殖し、肝臓に障害を与えるウイルスです。現在、5種類の肝炎ウイルスが見つかっています。それらはA型、B型、C型、D型、E型肝炎ウイルスと呼ばれています。このうち我が国で問題となるのは経口感染するA型肝炎ウイルスと血液感染するB型、C型肝炎ウイルスです。特にB型、C型肝炎ウイルスは長期間にわたり肝臓に住みつき、慢性肝炎、肝硬変、肝癌の原因となります。これらのウイルスを持ち続けている(持続感染)人をキャリアーといます。日本ではB型肝炎ウイルスキャリアー、C型肝炎キャリアーは各々人口の1~2%程度います。

2)アルコールに起因するもの

大量の飲酒(1日3合以上)は肝臓病の原因となります。栄養過多による脂肪肝と同じく、アルコールもカロリーが高く肝臓に脂肪が沈着する軽い脂肪肝から始まり次第に肝繊維症、肝硬変、肝細胞がんへ進行します。

3)薬剤に起因するもの

ある種の薬剤は肝障害の原因となります。ひどい場合は強い黄疸がでます。

4)肥満に起因するもの

脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などがあります。NASHは肝硬変、肝細胞がんへの進展が認められます。

5)原因が不明なもの

特発性門脈圧亢進症、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、自己免疫性肝炎(AIH)など、原因が不明ですが、長期にわたり肝臓が障害されます。

各種肝疾患の治療方針は?

治療上の疑問や使用薬剤の副作用について説明し、患者さんや家族の方と相談の上患者さん個人にあった最善の治療を選択するよう努力しています。

1)急性肝炎

突然発症する急性の肝障害で、代表としてA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎があります。黄疸がなく、AST・ALT(GOT、GPT)が比較的低い場合は外来経過観察が可能ですが、AST・ALTが著しく高い場合や黄疸が認められる場合、食事が十分に摂れない様な時は入院が必要です。特に意識状態の異常や凝固能力の低下が伴った場合は劇症肝炎への移行が疑われるため、血漿交換などの特殊な治療が必要となり、急を要します。

2)慢性肝炎

慢性肝炎の原因のほとんどがB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスです。B型慢性肝炎やC型慢性肝炎では原則的には原因となるB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイ ルスを排除する治療(抗ウイルス剤と言われる)が必要です。そのためB型肝炎にはエンテカビルなどの抗ウイルス薬やインターフェロン製剤が、C型肝炎ウイルスにはインターフェロン製剤や リバビリンの併用療法が治療の主役となります。また2012年よりプロテアーゼ阻害薬であるテラプレビルやシメプレビルを含めた3者併用療法が施行可能となり、C型肝炎セログループ1、高ウィルス血症の症例での治療成績が一段と高くなっています。現在までに当科ではB型肝炎では100名程度、C型肝炎では400名以上の方にインターフェロン治療を行っています。しかし、これらの抗 ウイルス薬は副作用も強く全ての患者さんに安全に使えるわけではありません。また、治療前効果を予測する事も可能で、このような治療を行う前には予測される副作用や注意事項を含め詳しく説明いたします。抗ウイルス剤が使用できない時には肝炎を沈静化し肝硬変への進展を遅らせるために肝比護剤を使用します。

3)肝硬変

慢性肝炎が進行すると肝硬変という状態になります。肝硬変では肝癌を合併する危険が高くなります。そのため肝癌の早期発見のため定期的な腫瘍マーカー測定や腹部超音波・腹部CTによる画像診断が必要です。

4)肝癌

基本的には早期発見と早期治療が大切です。肝細胞癌に対しては手術療法、ラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓術、経皮的エタノール注入療法あるいはマイクロ波などの治療をいたします。肝癌の大きさや部位、肝臓の状態、合併症等の有無を検査し、患者さんにとってより低侵襲かつよりよい治療法を選択し治療を行います。ラジオ波焼灼療法は年間100件程度に、肝動脈塞栓療法は年間120件以上に行っています。2009年4月よりラジオ波焼灼療法を十分に行なえる体制となっています。

5)食道静脈瘤、胃静脈瘤、直腸静脈瘤

慢性肝炎や肝硬変ではしばしば食道や胃の粘膜の静脈が太く浮き上がる食道静脈瘤や胃静脈瘤を合併します。またまれに直腸の粘膜の静脈が拡張した直腸静脈瘤が出現します。これら静脈瘤の破裂は大量出血につながり、肝不全をおこす引き金ともなります。当科では静脈瘤からの出血を回避するために、6カ月~1年に1回の内視鏡検査を行い、出血しそうな食道静脈瘤に対しては内視鏡的治療(内視鏡的硬化療法・内視鏡的結紮術)を行っています。当院での食道静脈瘤に対する内視鏡的治療の治療件数は年間約120件で、これまでに850人以上の治療を行ってきました。最近の成績では初回治療で平均2.4回の内視鏡的治療が行われ、治療後は一年で10~15%の方が再発のため再治療を受けていますが、治療後の静脈瘤破裂はほとんど見られていません。また胃静脈瘤からの出血予防にはカテーテルを用いた塞栓術をこれまでに130人以上に行ってきましたが、治療後にはほとんど再発を認めません。直腸静脈瘤に対しては食道静脈瘤と同様の内視鏡的治療で対応出来ますが、食道静脈瘤に比べやや再発が多くなっています。

肝がんの治療

肝がんに対して、当科ではラジオ波焼灼療法 (RFA : radiofrequency ablation)、肝動脈塞栓術 (TACE : transcatheter arterial chemoembolization)、化学療法を柱として治療を行っています。病状に応じて肝胆膵外科および放射線科とも協力して治療にあたっており、患者さんの状態に応じて最適な治療を行える体制を整えています。

ラジオ波焼灼療法

ラジオ波焼灼療法は、軽い負担で肝がんを治すことのできる画期的な治療法です。比較的小さいサイズの肝がんが治療対象となります。日本では1999年ころから導入され、2004年4月から保険適応となりました。優れた治療であることから急速に普及し、現在では肝がん治療に力を入れている多くの病院で行われています。当科では2009年から本格的にラジオ波焼灼療法を行える体制となり、年間に80例程度の治療を行っています。

ラジオ波焼灼療法の方法

当科では超音波で観察しながら皮膚を通して電極針を穿刺する方法(経皮的ラジオ波焼灼療法)で治療を行っています。超音波で腫瘍の場所を確認し、鉛筆の芯くらいの太さの電極針をその場所に穿刺します。適切な位置に穿刺できたことを確認したうえで通電し、電極針の周囲に高周波のラジオ波を発生させ、腫瘍を熱で凝固壊死させます。残存腫瘍からの再発を予防するため、周囲の肝臓の組織も含め腫瘍よりやや広い範囲を焼灼します。当科では、直線状のCool-tipタイプと、多数の小さな針からなる展開針の、2種類の電極針を使い分けており、肝がんの状態にあわせて適したものを選択するようにしています。

ラジオ波焼灼療法の適応

肝がんに対するラジオ波焼灼療法は、最も大きい病変が3cm以下で、個数が3個以内であることを基準にして治療を行っています。血管や胆管にはっきり腫瘍が入り込んでいる場合には行いません。肝臓以外の臓器に転移している場合も基本的に行いません。ただし、他に有効な治療がなく、ラジオ波焼灼療法を行うことで寿命を延ばすことが期待できる場合には、この基準から外れていても治療することがあります。肝機能があまり良くなくて外科的切除(手術)が困難な場合でも適応となることがあります。

ラジオ波焼灼療法の苦痛コントロール

当科では、ラジオ波焼灼療法を基本的に病棟の処置室で、全身麻酔下ではなく局所麻酔下で行っています。治療により電極針の周囲に熱が発生しますから、肝臓の中がやけどするようなものです。何もしなければ強い痛みを感じることになりますので、鎮痛剤と鎮静剤を使用してコントロールしています。治療前に鎮痛剤であるペンタゾシンおよび鎮静剤であるヒドロキシジンを点滴で投与します。さらに、治療直前に鎮静剤であるミダゾラムを投与します。これにより、大多数の患者さんは眠った状態のまま、大した苦痛を感じることなく治療を終えることができます。

転移性肝がんに対するラジオ波焼灼療法

肝臓以外の臓器に発生したがんが肝臓に転移したものを転移性肝がんと言います。当科では転移性肝がんに対してもラジオ波焼灼療法を行っています。転移性肝がんの場合は肝機能が良いことが多いため、腫瘍の個数やサイズに制限を設けず治療しています。延命の効果が期待できそうな場合は腫瘍が20個くらいあっても治療することがあります。肝がんとは異なり、転移性肝がんではラジオ波焼灼療法が他の治療と比べてどの程度有効なのか結論が出ていません。そのため、当科では外科的切除や化学療法が困難な場合に行うことを原則としています。

ラジオ波焼灼療法の入院治療の流れ

治療前日に入院していただきます。入院翌日の午後にラジオ波焼灼療法を行います。治療後は病室へ戻り、ベッド上で4時間安静にしていただきます。治療翌日にCTを撮影し、肝がんがうまく治療できていること、合併症が発生していないことを確認します。特に問題がなければ、体調に応じて治療の4~6日後に退院となります。入院期間は6~8日程度です。

肝動脈塞栓術

肝がんに栄養を運んでいる血管にカテーテルを挿入し、肝がんの存在する場所に抗がん剤を含む薬剤を注入します。さらに、塞栓物質を注入して肝がんに流れる血流を遮断します。これにより肝がんに大きなダメージを与える治療です。

肝動脈塞栓術の方法

血管撮影室でベテランの放射線科医が行います。通常、右の股の部分(鼡径部)から皮膚を通して動脈(大腿動脈)にカテーテルを挿入し、レントゲンで確認しながら肝臓を栄養する血管(肝動脈)まで進めます。肝がんを栄養している肝動脈の枝を探し、そこから薬剤を注入し治療します。治療が終了したらカテーテルを抜去し、止血します。従来、油性造影剤であるリピオドールに抗がん剤を混ぜたものを血管から注入し、さらに塞栓物質で血流を遮断する治療が行われていました(Conventional TACE)。近年、薬剤溶出性ビーズ(drug-eluting beads)を用いた治療(DEB-TACE)が普及しており、当科でも導入しています。肝がんの状態に応じてConventional TACEDEB-TACEを使い分けるようにしています。入院期間はラジオ波焼灼療法と同様です。

肝動脈塞栓術の適応

外科的切除(手術)の対象とならない肝がんで、腫瘍の数が多かったりサイズが大きかったりしてラジオ波焼灼療法が行えない肝がんが適応となります。肝機能があまり良くない場合でも治療する範囲をコントロールすることで治療が可能となります。一度に多数の腫瘍に対して治療を行うことができるのが特徴です。

化学療法

肝がんに対する化学療法(抗がん剤治療)では分子標的薬が使われます。肝がんが増殖したり転移したりする仕組みが研究されており、腫瘍細胞の中や周囲の組織との間で様々な信号のやりとりがされていることが分かってきています。こうした経路をブロックするようデザインされた薬剤です。延命効果があることが臨床試験により証明されており、他に有効な治療法がない場合が適応となります。現在保険適応となっているのは、ソラフェニブ(商品名ネクサバール)、レゴラフェニブ(スチバーガ)、レンバチニブ(レンビマ)、ラムシルマブ(サイラムザ)です。特徴的な副作用がありますので、これらの化学療法の導入は入院で行い、その後、外来で継続するようにしています。近日中に免疫チェックポイント阻害薬が認可される見込みであり、肝がんに対して有効な薬剤は増えていくと予想されています。

RFA生存率

2009年1月から2019年12月までにRFAを施行したのべ874例
初発肝細胞癌に対する初回治療としてRFAを施行したのは262例

初回治療としてRFAを施行した262例
ステージ1 121 / 2 106 / 3 34 / 4 1

生存率
               n
1年生存率     96%    227
2年生存率     89%    199
3年生存率     79%    159
4年生存率     69%    150
5年生存率     55%    131

 
初発治療後5年以上経過した169例
ステージ1 79 / 2 68 / 3 21 / 4 1

生存率
               n
1年生存率     96%    158
2年生存率     88%    147
3年生存率     80%    143
4年生存率     70%    138
5年生存率     57%    126

RFA治療風景

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