放射線診療科(治療部)

症状緩和治療

目次

症状緩和の放射線治療

放射線治療のコンセプトとして、「癌を治すための照射(根治照射)」と「癌による症状を和らげる照射(緩和照射)」の2つに大別できます。
ここでは、後者の症状緩和の放射線治療について説明します。

緩和照射の目的

緩和照射とは「症状を緩和する照射」です。つまり、癌を治すことを目的とするわけではなく、癌の進行を抑え症状を和らげることを目的とします。癌と上手に付き合っていくための一つの方法と言えます。

緩和照射の特徴

緩和照射は癌の完全な消失を目的としていないので、放射線量は根治照射と比較し少なくなります。それに伴い、治療期間の短縮、副作用の軽減、同じ部位への再照射が可能、などの利点が挙げられます。

治療の目安

以下の条件が必須となります。

  • 症状がある(疼痛、出血など)
  • 症状の原因となる病変を画像上で指摘できる
  • 30分間横になり動かずにいられる

 

治療の適応となる疾患や症状(以下は代表例になります)

転移性脳腫瘍(脳転移)
転移性骨腫瘍(骨転移)…疼痛
腫瘍による出血
腫瘍による神経障害…四肢の麻痺、痺れなど
腫瘍による気道の狭窄・閉塞…呼吸困難など
腫瘍による消化管の狭窄・閉塞…食べ物の通過障害、腸閉塞など
口やのどの腫瘍…摂食の妨げ

緩和照射の効果が期待できる病態

症状・病態 治療の例
データ・効果
コメント
骨転移が痛い 痛みのある骨に3Gy×10回、8Gy×1回など
→治療1か月後の疼痛緩和効果60%程度(Chow JCO 2007)
 
骨転移で脊髄(神経)圧迫
麻痺の有無によらず画像で圧迫のある症例。
【手術適応あり】
除圧手術+術後放射線3Gy×10回
→84% 歩行機能維持 (Lancet 2005)
【手術適応なし】
放射線治療3Gy×10回、8Gy×1回等
→短期的には8割以上で歩行機能維持(JCO 2016)
見つけ次第、
照射が必要です!

※骨転移ガイドライン2015で「脊髄圧迫症候群は,急速に不可逆的な両下肢完全麻痺に至るため,可及的早期に緊急手術または緊急放射線療法を行う」と記載されています。

骨転移の疼痛再燃 8Gy×1回の再照射
→30%が疼痛改善 (Lancet Oncol 2014)
再照射困難な症例は定位照射を検討。
「同部位に二度は照射できない」が常識でしたが、一部の病態では再照射もオプションになっています。
脳転移
【少数個】
定位照射:高線量×1~5回
→1年局所制御率59-88% (Radiother Oncol 2009)
【多発】
全脳照射:脳全体に3Gy×10回
→脳全体に効果あり
全脳照射の副作用を避けるため、できるだけ定位照射を行っています。
網膜・脈絡膜転移 症状がある場合2Gy×20回、3Gy×10回など
→視力維持・改善が86% (Wiegel Radiother Oncol 2002)
稀ですが、放射線治療が有効な病態の一つです。
気道閉塞
閉塞の責任病変に3Gy×10回、4Gy×5回など
→13例/24例 で画像上の改善 (Nihei Int J Clin Oncol 2002)
気管支鏡的処置との優先度の判断など、呼吸器の先生とも連携、相談の上対応します。
上大静脈症候群 責任病変に3Gy×10回、2Gy×20回など
→2週間後に70%程度で症状改善 (Lynn NEJM 2007)
顔面、上肢の浮腫にはじまり、頭蓋内圧亢進や咽頭、喉頭浮腫に至る場合もあります。
緊急照射を要する場合もあります。
消化器癌の出血
出血している腫瘍に3Gy×10回
→胃癌で出血している患者13人/24人で症状緩和 (Tey IJROBP 2007)
胃癌に対して放射線治療はあまり用いられませんが、出血がある場合は適応になりえます。
食道癌の通過障害 3Gy×10回もしくは2Gy×20回に可能であれば化学療法を併用
→70%弱で腫瘍消失 (Radiother Oncol 2000, Clinical Oncology 2008)
食道癌は放射線感受性が高く、有効な治療法です。
ステント治療やバイパス手術も含めて、患者さんそれぞれのベストな治療を検討します。
肝がんによる
門脈・胆管の腫瘍栓
門脈腫瘍栓に対して3Gy×10回
→40%で門脈腫瘍栓の縮小。血管治療を併用(Yoon IJROBP 2012)
肝癌診療ガイドラインでも、他の治療が難しい症例では放射線治療で生存の延長が期待でき「弱い推奨」となっています。
肝腫瘤(肝がん、肝転移)の
疼痛、腹満感
肝臓全体に8Gy×1回
→約半数で症状が改善 (Soliman JCO 2013)
当科の成績では90%以上で疼痛改善を認めています。

※2014年12月~2016年11月に治療を受けた患者さん12人中12人で疼痛改善

皮膚転移、皮膚浸潤
症状緩和が必要な皮膚病変に3Gy×10回
→腫瘍の縮小、出血・悪臭の改善が期待できる
 

治療の流れ

1. 放射線科初診

初診日には、問診と診察、治療の説明を受けて頂きます。治療は行いません。

2. 放射線治療計画(シミュレーションCT)

放射線治療計画を作成するための CTを撮影します。ここでは、20~30分間横になり動かずにいて頂く必要があります。実際の治療はここから2日後に始まります。(土日祝日を除く)

3. 治療

基本的に10回の治療を受けて頂きます。平日に1日1回の照射を連日行いますので、2週間の治療になります。1回の治療は10分程度で終わります。照射に伴う痛みや熱さなどはありませんので、ご安心ください。
10回コースの他に1回、5回、15回、20回など様々な照射コースがありますので、病状や病気の部位などからそれぞれの患者さんに最適な治療を提案します。
また放射線治療は外来通院で行うことが出来ますので、患者さんのライフスタイルの妨げになりにくい治療と言えます。外来通院がご負担であれば、入院での治療にも対応しています。

転移性骨腫瘍(骨転移)に対する緩和照射

ここでは、緩和照射の中で最も頻度が高い、骨転移による疼痛に対する放射線治療について説明します。
複数の臨床試験データをまとめた報告では、緩和照射によって約6割の患者さんに疼痛の改善が認められました。その効果は早く出る方もいますが、一般的には治療後1ヶ月以内に現れると言われています。つまり、放射線治療は即効性のある治療ではないため、鎮痛薬も上手く使いながら放射線治療を受けて頂く必要があります。

その他、メタストロンという放射性物質の点滴治療も当院では行っております。それらを踏まえ、患者さんのご病状に合った治療法を提案します。

副作用

根治照射に比べ放射線量が少ないので、副作用がとても少ない点が緩和照射の特徴と言えます。ほとんどの患者さんが何の副作用もなく治療を終えますが、まれに強い副作用が出ることもあります。出現する可能性のある副作用は照射する部位によって異なるため、詳しくは放射線科担当医からの説明を聞いてください。
尚、照射した部位と無関係なところに副作用が出ることはありませんので、ご安心ください。(例えば、背骨への照射で脱毛が起こることなどはありません)

ご紹介頂く先生へ

ご紹介頂く際には、患者さんに当科初診の予約を取得するようお伝え頂き、紹介状、診断画像をご準備ください。治療終了後は、お返事、照射記録とともにご紹介元の先生の方へお戻り頂きます。
ご不明な点がございましたら、お気軽に放射線治療部医師までご連絡ください。

2018年1月更新 伊藤 慶

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