放射線診療科(治療部)

膀胱温存療法

浸潤性膀胱癌に対する低用量化学放射線療法+膀胱部分切除/骨盤リンパ節郭清による根治をめざした膀胱温存療法: 第 II 相多施設共同研究

概要

膀胱全摘出術が必要な膀胱癌の患者さんを対象に、化学療法・放射線治療を組み合わせることで手術を部分切除術に留める治療戦略です。その治療の有効性を評価する試験です。

対象となる患者さん

  • 病気:膀胱癌、ステージ T2-3N0M0、膀胱頚部(膀胱の出口付近)以外の部位に筋層浸潤部(癌が表面の粘膜より深い筋層まで達している状態)が局在している
  • 年齢:20歳以上
  • 全身状態:良好(手術が可能)

背景・目的

筋層浸潤のある膀胱癌(cT2-4aN0M0)の標準治療は膀胱全摘出術および尿路変向です。尿路変向は、小腸の一部を利用して形成されます。この治療の問題点は、手術の侵襲性が大きい点と、尿路変向に伴う QOL の低下です。
これらの問題点を克服すべく、様々な膀胱温存療法が試みられてきました。東京医科歯科大学では、本試験の治療方法を約15年にわたる探索的臨床研究で施行してきており、治療成績の解析結果を基にプロトコール修正を経て、最適と考えられる本治療の方法に至りました。
膀胱全摘出術が必要な患者さんに、化学療法・放射線治療を行った後に膀胱部分切除を行うことが、この臨床試験の治療になります。この試験の目的は、本治療の有効性を確認することです。


図:膀胱温存手術の説明

膀胱を全摘する場合(左)、腎臓から排出される尿は腸を経てお腹から排泄されるようになります。
膀胱の部分切除(右)、尿管をそのままにして、できるだけもとの排泄機能を維持することが本治療の目的です。

試験の治療法

  1. 腫瘍減量目的に膀胱鏡による膀胱腫瘍切除術を行います。
  2. 化学放射線療法を行います。放射線治療を膀胱および所属リンパ節領域に対して、40 Gy / 20回/4週間(1日1回2 Gy)行います。同時に点滴による抗がん剤治療を行います。
  3. 化学放射線療法終了後、1ヶ月程度経過した時点で尿検査や画像検査(CTやMRIなど)で治療効果を判定します。膀胱部分切除で腫瘍が取りきれると判断された場合は膀胱部分切除を行います。その際に、骨盤内のリンパ節郭清も行います。

※膀胱鏡手術:腰椎麻酔(下半身麻酔)を行い、尿道から膀胱鏡と呼ばれる内視鏡を挿入し病巣部分を電気メスで切除する手術です。
※放射線治療:多方向から三次元的に病巣の形に一致させた放射線照射により、正常臓器への負荷を減らした放射線治療を行います。
※抗がん剤:本試験ではシスプラチンと呼ばれる抗がん剤を放射線治療開始から最初の5日間と、放射線治療の最後の5日間の2回行います。いずれも入院して点滴で行われることが多いです。(化学療法を行わない期間は通常、通院での放射線治療となります。)
※骨盤リンパ節郭清:膀胱の所属リンパ節と呼ばれる、リンパ流が膀胱から最初にたどり着くリンパ節群を手術で切除することを指します。
※治療効果判定で要件が満たされなかった場合は、膀胱全摘出を行います。

予想される副作用

放射線による副作用は、基本的に放射線が照射されている範囲内に起こり、どのような副作用が現れるかある程度は予測できます。しかし、副作用の現れ方には個人差があるため、その頻度や程度などを完全に予測することはできません。以下に主な副作用を列挙します。

1)治療中に現れうる副作用
  • 皮膚炎…塗り薬で対応します。
  • 腸炎…下痢症状があれば下痢止め、腹痛があれば痛み止めを使用します。
  • 膀胱炎
  • その他:血球減少、陰部脱毛、倦怠感・悪心など
2)治療後数ヶ月して現れうる副作用
  • 皮膚炎…皮膚が硬くなります。
  • 腸炎…下痢や出血など。重篤化すると穿孔、腸閉塞となる場合もあります。
  • 膀胱炎
  • 足の浮腫
  • その他:骨折、性機能低下、二次発癌など

メリット

膀胱全摘出と比較して、一番のメリットは何よりも「膀胱を温存できる」ということです。その他にも次のようなメリットが挙げられます。①侵襲の大きな手術に伴う合併症の回避。②尿路変向に伴う精神的・肉体的苦痛の回避。③性機能障害の回避。

デメリット

温存した膀胱における腫瘍再発の可能性があることです。原則的に、筋層非浸潤癌(T1以下)再発の場合は経尿道的腫瘍切除+膀胱内注入療法による膀胱温存療法の継続を、筋層浸潤癌(T2以上)再発の場合は根治可能であれば膀胱全摘除の適応となります。膀胱温存療法後の膀胱全摘除は、手術に際しての合併症の危険性が高まる可能性が考えられます。

最後に

以上は本試験の要点を簡潔にご説明したものです。試験の詳細についてや試験に関する質問等ございましたら、遠慮なく臨床試験担当者にお尋ねください。

研究担当者:腎泌尿器外科  古賀 文隆部長
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2016年7月更新 小川 弘朗

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