外科(肝胆膵)

専門分野

肝《肝臓の手術》

肝切除術の対象となるのは、肝細胞癌、胆管細胞癌(=肝内胆管癌)、転移性肝癌、肝門部胆管癌、肝内結石症などです。当院での肝切除件数は年間約90例で、最近の傾向としては大腸癌肝転移に対する肝切除の件数が増加しています。これは大腸外科グループが大腸癌の肝転移に対して積極的に化学療法と肝切除術を組み合わせた治療を行っているためで、化学療法後に肝機能が低下している患者さんや繰り返し肝切除を行う患者さんなど、ハイリスクな患者さんに対する肝切除術も増えてきています。当院ではそれらの患者さんに対する肝切除術の多くを両グループで協力して行っています。
その他の肝臓手術としては、肝嚢胞に対する腹腔鏡下肝嚢胞開窓術(天蓋切除術)などを行っています。
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肝臓癌の根治性と切除後に残った肝臓の血流を考慮した系統的肝切除術は、肝臓内に埋まった大きな血管を露出しながら行うため、安全かつ確実に行うには高度な技術が要求されます。

麻酔科医との連携による無輸血肝切除術

肝臓は大変血流の豊富な臓器であり、肝臓の手術の際には出血を少なくするための様々な工夫が必要です。通常、肝臓に流れ込む血管を間欠的に遮断しながら手術を行いますが、肝臓の中には肝臓から血液を運び出すための大きな血管である肝静脈が何本も走っており、流れ込む血管を遮断するだけでは出血のコントロールは十分ではありません。肝静脈の血圧は全身麻酔の際の人工呼吸の方法や手術中の点滴の量によって大きく変動します。そこで、手術中に患者さんの呼吸や点滴の管理を担当する麻酔科医と外科医が協力して肝静脈の血圧をコントロールすることにより、肝静脈からの出血を少なくすることができます。数多くの肝切除術を行っている当院では、専門的な肝臓外科麻酔に習熟した麻酔科医との連携により、ほとんどの肝切除術を無輸血で行っています。

腹腔鏡を用いた肝切除術・・・開腹手術の延長線上にある信頼性の高い腹腔鏡手術

肝臓は横隔膜に固定された臓器であり、安全に手術を行うためには、横隔膜との癒着を剥離して肝臓をお腹の浅い位置へ移動させる必要があります。従来はそのために右のあばら骨の下(季肋下)を大きく横切開していましたが、腹腔鏡を利用することによって季肋下の大きな横切開がなくても肝臓手術が行えるようになりました。
腹腔鏡下肝切除術は腹腔鏡下胆嚢摘出術と同様に腹腔鏡と手術器具を出し入れするためのいくつかの小さな穴の傷(5-15mm)だけで手術をする方法です。一般的に、肝臓の腹側にできた小さくて単発(1個のみ)の腫瘍(肝細胞癌、転移性肝癌など)を対象とした部分切除か、肝臓の左端の一区画(外側区域)の切除がこの方法で行われています。当院では、肝臓の背側に位置する腫瘍や10cmを超える大きな腫瘍に対しても腹腔鏡下肝切除を行っています。
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大腸癌の手術後1年目にできた転移性肝癌を腹腔鏡下肝切除術で摘出した患者さんのお腹の傷(ヘソの下の長い傷は前回開腹による大腸切除を行った際の傷)

肝切除 症例数年次推移

肝切除 症例数年次推移

胆 《胆道の手術》

胆道(胆管・胆嚢・十二指腸乳頭部)にできる癌は早期発見が難しいのが現状です。当グループで診療している胆道癌の患者さんの数は年間約30~40人ですが、精密検査を行った段階で残念ながら手術適応なしと判断される患者さんや、手術可能と判断して開腹しても腹膜播種などが原因で試験開腹に終わる患者さんなど、いわゆる切除不能進行癌の患者さんは40%を超えており、根治手術件数は年間約20例くらいです。胆道癌に対する手術は病巣の部位によって肝切除や膵切除を組み合わせた術式が選択されます。肝切除による根治手術が可能な場合には、術後肝不全を予防するための術前門脈塞栓術(肝切除の数週間前に切除予定側の血管を閉塞させる処置を行って、残る側の肝臓を肥大させておく方法)なども必要に応じて取り入れており、肝膵同時切除や門脈合併切除といった難易度の高い手術も行っています。
良性疾患では、腹腔鏡下胆嚢摘出術、腹腔鏡下総胆管切石術のほか、膵・胆管合流異常症や胆管嚢腫に対する診断と治療も数多く手がけています。

腹腔鏡下胆嚢摘出術・・・高い安全性と高い完遂率

専門性の高い肝胆膵疾患に対する手術の中で、腹腔鏡下胆嚢摘出術は唯一専門施設以外でも数多く行われている手術です。難易度の高い手術ではありませんが、胆嚢炎の患者さんや開腹手術の既往のある患者さんに対する手術の際には高度な技術を要する場合もあります。その様な中、当院では上腹部手術の既往や炎症の有無などに関わらずすべての良性胆嚢疾患を腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応としています。そして手術中に胆嚢癌が判明した患者さん以外には開腹手術へ移行したことはほとんどありません。この様に、当院では胆道疾患(特に胆道癌)に関する豊富な専門的知識と経験をもとに、安全で確実な腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っており、学会などではその標準的手技を全国の外科医に普及させるための啓蒙活動を行っています。

膵 《膵臓の手術と化学放射線治療》

当グループにおける膵切除術の件数は膵癌、胆道癌、膵癌以外の膵疾患(良性も含む)に対するものを合わせると年間40~50例です。中でも最も多い術式は膵頭十二指腸切除術ですが、必要であれば膵臓を部分的に摘出する縮小手術なども行っています。また、膵体尾部切除術の多くは、腹腔鏡補助下に行っています。病気の種類としては、浸潤性膵管癌(膵癌)に対する手術件数はバイパス手術を含めて年間30~40例です。膵癌以外には、膵腺房細胞癌、膵神経内分泌腫瘍、ラ氏島腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍、Solid-pseudopapillary tumor、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)などが手術の対象となります。

膵頭十二指腸切除術

膵臓の中でも十二指腸に近い膵頭部にできた膵臓癌や中部~下部の胆管癌、十二指腸乳頭部癌などに対する標準的な手術は膵頭十二指腸切除術です。この手術では、膵頭部と十二指腸、胆嚢・胆管だけでなく胃の出口(幽門輪)側の1/3~1/2をまとめて切除します。胃を残すことが可能な場合には全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(胃をすべて残す術式)を積極的に採用しています。

膵癌に対する化学放射線療法

浸潤性膵管癌(膵癌)は最も予後不良な悪性腫瘍のひとつです。当院ではたくさんの膵癌患者さんの診療を行っていますが、切除不能の割合が高く約80%の患者さんが来院された時点で既に切除不能の状態です。また、比較的早期(病期I~II)に切除できた場合でも約45%という高い確率で肝転移を起こします。これは膵癌が早い時期から全身に拡がる性格を持つことを表しています。これに対して、近年、塩酸ゲムシタビンやティーエスワンなどの膵癌に有効な新規抗癌剤が登場しており、これらと手術や放射線治療を組み合わせた治療が有効です。
当院では、20年以上前から手術中と手術の後に放射線を照射し、さらに術後補助化学療法(抗癌剤治療)を併用する治療方法(化学放射線療法)を採用して行ってきましたが、より高い効果を期待して、2008年より術前に化学放射線療法を行う計画をスタートさせました。切除後ではなく切除前に化学放射線療法を行うことによって、腫瘍の縮小により手術の治癒度が上がることが期待されるだけでなく、治療全体の完遂率が上がることも期待されます。さらに、切除不能の局所進行膵癌に対しても腫瘍の縮小により切除可能な状態になることを目標として、同様の化学放射線療法を行っています。
なお、この手術前化学放射線療法は、いわゆる標準治療ではないため、臨床試験として取り扱っています。十分な説明を行った上で、患者さんが標準治療を希望された場合には標準治療を行っています。

腹腔鏡(補助)下膵切除術

当院では良性疾患に対する膵体尾部切除や腹腔鏡下に行っています。脾臓の栄養動脈は膵臓のすぐ横を通りますので、膵体尾部切除術の際には通常脾臓を一緒に摘出しますが、脾臓とその血管を残して膵体尾部のみを切除する手術も行っています。また、膵頭十二指腸切除術もその手術の一部を腹腔鏡下に行うことによって、小さな傷と小さな侵襲(身体的負担)で行うことができます。当グループは、腹腔鏡下肝切除術だけでなく、腹腔鏡下膵切除術においても良好な手術成績を得ており、こちらについても国内外で高い評価を得ています。
米国外科学会雑誌に採用された腹腔鏡下膵切除術の手術手技に関する論文では、ビデオによって手術を閲覧することが可能です。
http://www.journalacs.org/article/S1072-7515(13)00167-1/fulltext
http://www.journalacs.org/article/PIIS1072751513001671/addons

膵切除 症例数年次推移

膵切除 症例数年次推移

脾 《脾臓の手術》

当院では、肝硬変に伴う門脈圧亢進症のためにできた胃静脈瘤の内科的治療が困難な患者さんに対して胃血行遮断術を伴う脾臓摘出術を行っています。その他、特発性血小板減少性紫斑病や遺伝性球状赤血球症といった脾機能亢進症のために脾臓摘出術の必要な患者さんや、C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療を行うにあたって血小板減少症があるために脾臓摘出術が必要な患者さんに対しては、腹腔鏡下脾臓摘出術を行っています。脾臓は左の横隔膜に固定され、胃の背側に隠れており、脾臓を摘出するためには脾臓を胃と横隔膜から剥離しなければなりませんが、脾臓はデリケートで出血しやすい臓器なので、安全に摘出するためには通常大きな傷が必要です。しかし腹腔鏡を用いることによって、小さな傷でも脾臓を剥離することができます。

English Version

Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery

The characteristics of our therapeutic policy against hepatobiliary and pancreatic cancers are,

1) Appropriate operative procedure

2) Safe and steady surgical technique

3) Achievement of both high grade curability and functional preservation
Advanced surgery, Laparoscopic surgery

4) Multifarious strategy for advanced disease besides the surgery For pancreatic cancer
Intraoperative plus preoperative or postoperative radiotherapy
Chemotherapy (regional, systemic, oral)
Chemotherapy plus radiotherapy
For hepatic cancer
Appropriate combination of modalities (RFA, TAE, PEIT)

Especially, regarding laparoscopic HBP surgery, we have a lot of advantages. We have coped with a lot of expectations of patients who hoped minimally invasive surgery.

Thank you for your attention to Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery group.

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