眼科

専門分野

当科では白内障をはじめ、網膜硝子体疾患涙道疾患(涙道閉鎖)緑内障ぶどう膜炎眼瞼疾患など、幅広い範囲の疾患に対し、外科的な治療を重点的に行っています。

白内障

カメラに例えると、レンズに相当する水晶体が濁ってくる状態です(図1)。年齢とともに誰にでも生じる疾患ですが、眼外傷、糖尿病やアトピー性皮膚炎などの全身疾患、副腎皮質ステロイドなどの薬剤使用、その他の眼の病気などに伴って生じる場合もあります。進行性の疾患であり、治療は手術を行います。手術では濁った水晶体を除去し、代わりのレンズとなる人工水晶体、すなわち眼内レンズを挿入します。

当院の白内障手術の特徴

  • 低侵襲手術:ほとんどの症例で、2.4mmの小切開による低侵襲の超音波乳化吸引術を行っています。
  • 難症例に対する手術:超音波手術で行うことができない進行した白内障の患者や、水晶体を支えるチン氏帯が弱い患者、炎症性疾患のために茶目(虹彩)が癒着した患者などの合併症がある患者については、手術の安全性を重視し、患者の状態に即した手術手技を適用しています。
  • 手術件数:年間約1500件で、約8割が日帰り手術です。通院治療が難しい患者に関しては、短期間の入院で対応しています。
  • 眼内レンズ偏位・脱臼への対応:眼内レンズが偏位、脱臼、落下した患者についても、眼内レンズ摘出および二次挿入(眼内レンズ縫着術、または強膜内固定術)の紹介を受け入れています。
  • クリニカル・パスの導入:白内障手術に関しては、すべての患者でクリニカル・パスを用いて、治療の流れをわかりやすく説明しています。
  • 診療連携:紹介された患者様に関しては、病状が安定した時点でかかりつけの医療機関に逆紹介をさせていただいております。
<図1>

網膜硝子体疾患

網膜は眼球壁の内側にある神経組織で、カメラに例えると光を感じ取るフィルムに相当する機能をもちます。従って網膜に病変が生じると、視機能を著しく低下する場合があります。近年、糖尿病や高血圧症といった生活習慣病の増加に伴い、網膜に病変を持つ患者が増加しています。健康診断で「眼底出血」と診断された場合、このような生活習慣病が隠されていることが多く、要注意です。また、網膜剥離に代表されるように、早急に手術を行わないと失明にいたる場合もあります。当院では、様々な網膜硝子体疾患の診断・治療に対応できる診療体制を整えています。

糖尿病網膜症

日本人における失明原因の、約2割を占めるのが糖尿病網膜症です(図2)。血糖が高い状態が続くと、網膜の細い血管は少しずつ損傷を受け、閉塞が生じ、網膜は酸素が不足した状態となります。その結果、新しい血管(新生血管)が発生し、酸素不足を解消しようとしますが、このような新生血管は非常にもろいため、容易に破綻して出血が生じます。また、新生血管はやがて網膜の表面に増殖組織を形成し、牽引による網膜剥離を起こします。糖尿病網膜症は、糖尿病になってから数年以上経過して発症しますが、病状がかなり進行するまで自覚症状がありません。気が付くと手遅れだった、という場合も珍しくないのです。糖尿病で定期的な眼底検査が必要とされる理由は、病気が進行すると視力回復が難しいため、時期を逃さずに適切な治療(レーザー治療、硝子体手術)を受けることが、最も重要であるからです。

<図2>

網膜静脈閉塞症

高血圧、動脈硬化が進むと、網膜の血管にも変化が生じます。網膜の動脈と静脈は血管の膜を共有し接していますが、この部分で動脈硬化が起こると動脈が静脈を圧迫し、静脈内の血流が滞るため、血栓ができて静脈が閉塞します。その結果、閉塞した部位で血流がうっ滞するため、出血や浮腫が生じます(図3)。特に、ものを見る中心部分(黄斑部)に出血や浮腫が生じると、著しい視力低下が生じます。また、血管の閉塞は網膜の酸素不足をひき起こすため、無治療だと糖尿網膜症と同様の機序で新生血管が生じます。
高血圧や動脈硬化に対する全身治療と並行して、網膜の浮腫を改善する治療や、酸素不足に陥った網膜組織に対するレーザー治療を行います。

<図3>

網膜剥離

眼球内はゼリー状の硝子体という組織で満たされていますが、年齢変化により硝子体には液化が生じます。硝子体はもともと網膜に接触していますが、徐々に網膜から剥がれていきます。その際、硝子体と網膜に癒着がある部位に牽引が生じると、裂け目(裂孔)ができる場合があり、さらに網膜裂孔から網膜下に水が入ると網膜剥離が発症します(図4)。
網膜剥離は、狭い範囲でとどまる場合もありますが、時間経過とともに剥離の範囲が拡大する場合がほとんどで、一般的には自然治癒は望めず失明に至ります。従って、手術で原因となっている網膜裂孔を閉鎖し、剥がれた網膜を復位させることが必須となります。手術には大きく分けて二つの方法があり、眼球の外側からシリコン製のあて物を縫い付けて眼球を陥凹させることで裂孔を閉鎖する方法(強膜バックリング)と、硝子体を切除した後に眼内にガスを充填し内側から網膜を復位させる方法(硝子体手術)があります。術前の硝子体の性状、網膜裂孔の位置、網膜剥離の範囲などから、病態に適した術式を選択します。

<図4>

黄斑上膜(黄斑前膜)、黄斑円孔

黄斑部は、光を感じる網膜組織の中心部分であり、ここに病気が生じると物が歪んで見えるようになります。代表的な疾患が、黄斑上膜(黄斑前膜)と黄斑円孔です。いずれも硝子体の年齢的な変化が原因ですが、硝子体の一部が黄斑部網膜に残存し、膜状の組織を形成するのが黄斑上膜、硝子体による黄斑部への牽引が接線方向に加わることで黄斑部に裂隙が生じ、これが徐々に拡大して全層の孔を形成するのが黄斑円孔です(図5)。
黄斑上膜は、文字通り黄斑部の表面に存在する膜が症状の原因ですので、手術で膜を取り除くことが治療です。術後視力の安定には通常数か月かかりますが、視神経細胞が障害されていなければ、徐々に改善することが期待できます。
黄斑円孔は、黄斑部に働く接線方向の牽引力が発症の原因なので、硝子体を切除して黄斑部への牽引を取り除くことが必要です。また、網膜の最も表層にある内境界膜を剥離することで、網膜組織が伸展できるようにし、眼内を気体に置換して術後うつ伏せ体位を保つことで円孔を閉鎖させます。以前は発症から時間が経過した症例では閉鎖が困難でしたが、内境界を特殊な色素で染色することで可視化し、十分な剥離を行うことでほとんどの症例では閉鎖が得られるようになりました(図6)。術後視力は黄斑部の視細胞がどの程度機能するかによりますが、一般的には数か月で徐々に視力が安定します。

<図5>
<図6>

当院で使用している網膜硝子体疾患の検査機器、手術機器

検査機器

  • 光干渉断層計(OCT):網膜病変を非侵襲的に断面で観察する検査機器です。網膜病変の詳細な観察が可能なSD-OCT、ニデック社製RS3000を取り入れています(図7)。
    <図7>
  • 超音波断層観察装置:
    網膜硝子体病変の動的な観察ができるトーメー社製UD-8000を導入し、眼底病変が透見できない症例の診断に用いています。
  • 蛍光眼底造影:フルオレセイン眼底造影、インドシアニングリーン眼底造影、いずれも施行することが可能です。網膜病変、脈絡膜病変の病態評価に用いております。
  • 光学式眼軸長測定装置 OA2000:トーメー社製のOA2000を採用しています。この装置は眼軸長を多点で測定するフーリエドメイン式を用いるため、従来の測定装置に比較して進行した白内障眼でもより正確な測定が行えます。また、角膜トポグラフィー機能を搭載しているため、角膜不正乱視の検出も可能です。<図7-1>
  • <図7-1>

手術機器

  • 小切開硝子体手術:25G、および27Gトロッカーシステムを採用した硝子体手術の最新機種であるアルコン社製コンステレーションを導入し、全例小切開手術で行っております。眼内にガスを留置しない場合や、腎不全のために透析が必要な患者には、日帰り硝子体手術も行っております。
  • 広角観察システム:Carl Zeiss社製手術顕微鏡Lumera700に、非接触広角観察システムResightを備え、最新・最良の環境で手術を行っています。特に、網膜剥離に対する硝子体手術では、安全に手術を行うことが可能です(図8)。
    <図8>

    涙道疾患(涙道閉塞)

    • 自覚症状:涙道閉塞は、涙の通り道の一部が塞がっている状態です。このため、涙がたまる(涙目)、目やにがなかなか治らない、などの症状がよくみられます。
    • 分類と原因:涙道閉塞は、その発症時期から、先天性と後天性の閉塞に分けることができます。

    先天性鼻涙管閉塞

    通常出生時までに開放する鼻涙管開口部(涙の通り道の鼻への出口)が閉塞したままであるため、出生後間もなく涙や目やにがたまります。

    後天性涙道閉塞

    原因として、ヘルペスをはじめとしたウイルス性結膜炎、抗がん剤や緑内障点眼薬など薬剤による涙点閉塞や涙小管閉塞、副鼻腔手術後の炎症による鼻涙管閉塞などがありますが、原因が特定できない閉塞がほとんどです。

    治療

    先天性鼻涙管閉塞では、1歳までに閉塞部が自然に開放する場合が多いですが、症状が続けば、閉塞部位を開放する治療を行います。後天性涙道閉塞では、ファイバーテック社製の最新の涙道内視鏡システムと、オリンパス社製のハイビジョン鼻内視鏡システム(図9)を用い、閉塞の範囲と炎症の程度により、涙管チューブ挿入術または涙嚢鼻腔吻合術を行います。

    <図9>
    • 涙管チューブ挿入術
      涙点(目元にある涙の通り道の入り口)から挿入した涙道内視鏡ファイバー(図10)で閉塞部を確認・開放した後に、チューブ(図11)を挿入し、涙の通り道が安定するまで留置しておきます(図12)。

      <図10>
      <図11>
      <図12>
    • 抗がん剤による涙道閉塞
      近年増加しているのがTS-1を始めとした抗がん剤の副作用による涙道閉塞です。涙点閉塞や涙小管閉塞が急速に進行して、治療が難しくなることが少なくありません。抗がん剤による涙道閉塞は、早期の涙管チューブ挿入術が有効です。
    • 涙嚢鼻腔吻合術
      涙嚢炎を合併するなど、涙道の閉塞や炎症が強いために、日帰り手術では改善が難しい場合は、新しいバイパスを作る涙嚢鼻腔吻合術(涙嚢を直接鼻腔につなぐ手術)を2泊3日の入院で行っています。
    • 涙嚢鼻腔吻合術鼻内法
      当院では、ほとんどの涙嚢鼻腔吻合術を、メドトロニック社製のIPCシステムを用い、顔に傷を作らない方法(鼻内法)で行っています。涙嚢鼻腔吻合術を鼻内法で行うことのできる施設は、全国でも限られています。
    • 涙嚢鼻腔吻合術鼻外法
      鼻腔が非常に狭い場合や、手術の際に病理組織検査が必要な場合は、皮膚を切開する鼻外法で行います。

    涙道閉塞の原因として、まれに腫瘍や肉芽腫などが関係することがありますので、当院では、涙嚢鼻腔吻合術を行う前に、内視鏡による精査に加え、CTやMRIによる画像検査を行い、術式や適応を慎重に決めています。

    緑内障

    国内における後天性の失明の原因の第一位であり、40歳以上の有病率は5%と言われています。眼圧の上昇に伴い視神経が障害され、それに伴って視野が狭くなる疾患です。今のところ眼圧を下げることが唯一の有効な治療方法とされています。

    • SD-OCTを用い、緑内障の初期病変である神経線維欠損の検出を行っています。
    • ハンフリー自動視野計、ゴールドマン視野計を用い、病期の正確な評価を行います。
    • 点眼治療でも眼圧のコントロールが難しい患者には、病態に即した外科治療を行っています。

    ぶどう膜炎

    眼に充血が生じた場合、結膜炎などの眼の表面の病気が多いのですが、まれに茶目や眼の内部に炎症が生じている場合があります。虹彩、毛様体、脈絡膜といった、色素を含む組織に生じる病気で、ぶどう膜炎と呼ばれます。結膜炎と違い、放置すると徐々に組織の破壊が生じてしまい、緑内障などの合併症を引き起こすので注意が必要です。一般に診断・治療が難しく、ベーチェット病やサルコイドーシスといった難治疾患の場合もあります。

    • どのようなタイプのぶどう膜炎か、問診、経過、臨床所見から診断を進めます。
    • 特殊な検査、治療が必要な場合、ぶどう膜炎診療を専門としている東京医科歯科大学や、 東京女子医大東医療センターと連携して診療を行っております。

    眼瞼疾患

    ものもらい(霰粒腫)、さかまつげ(睫毛内反・乱生、または眼瞼内反)、眼瞼下垂など、一般的な瞼の病気についても外科的な治療を行っています。

    HIV感染症

    都立駒込病院は東京都におけるエイズ診療拠点病院であり、1980年代から数多くのHIV感染患者を感染症科と連携しながら診療してきました。HIV感染症では、眼に病変があっても自覚症状がないことが多く、HIV関連網膜微小血管症による眼底出血、日和見感染であるサイトメガロウイルス網膜炎(図13)、その他さまざまな眼の合併症に対して診療を行っております。

    <図13>

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