血液検査結果の見方(肝臓中心に)
〜健康診断で肝機能障害と判定!原因はお酒?再検査は必要?〜

血液検査結果の見方(肝臓中心に)<br>〜健康診断で肝機能障害と判定!原因はお酒?再検査は必要?〜

投稿者:肝臓内科医長 今村 潤、医員 久保田 翼

はじめに

健康診断で肝機能障害を指摘される人は少なくありません。そのような場合、すぐに医療機関を受診するべきなのか、あるいは、症状がなく、忙しくて病院に行けないために放置しても大丈夫なのかと迷ってしまうことでしょう。
お酒を飲んでいる方の場合には、きっと飲酒が原因で肝臓の値がひっかかっただけであり、精密検査を受ける必要はないと考えてしまうかもしれません。
実際、肝臓機能を見る検査の一つであるγ-GTPは、アルコールの摂取量が多いと上昇します。しかし、γ-GTPは脂肪肝や薬剤による肝障害、胆嚢炎、原発性胆汁性胆管炎といった病気など、お酒の飲みすぎ以外の原因によって異常値になることもあるのです。

このようなケースでは、お酒を飲むのをやめて様子をみたとしても検査値は改善しないのです。

それどころか、もしも胆嚢炎や原発性胆汁性胆管炎であれば、治療開始時期が遅れることにより、重い病態にまで病状が進んでしまう可能性があります。
具体的には、胆嚢炎を放置した場合、バイ菌がお腹の中にまで広がり膿を作り、さらに血流にまで侵入することがあります。その結果、血圧が下がり、命の危険が生じます。

原発性胆汁性胆管炎を放置すると、肝硬変になってしまうことがあります。その結果、肝不全や肝臓癌で命を落とすことにもつながりかねません。
実際、原発性胆汁性胆管炎は、以前は原発性胆汁性肝硬変と呼ばれていました。この病気が見つかったばかりの頃は、早い段階で診断することが難しかったのです。そのため、肝硬変まで病気が進行し、さまざまな症状が出始めてからようやく診断がつきました。このため、以前には原発性胆汁性胆管炎は、原発性胆汁性肝硬変と呼ばれていたという訳です。

しかし、現在は診断の精度があがりました。そのため、症状がない初期の段階、すなわち、原発性胆汁性胆管炎のときに診断がつく患者さんが多くなりました。
これを受けて、2016年にこの病気は原発性胆汁性肝硬変から原発性胆汁性胆管炎という名前に変わりました。

このように、γ-GTPの異常という一つをとってみても、中には重篤な経過をたどる病気があるのです。
もしも健康診断で肝機能障害を認めた場合は、たとえ飲酒が原因だろうと自己判断したとしても、医療機関で精査を受ける方がいいでしょう。

肝臓内科では、肝疾患診療に熟練した医師が初診患者さんに持参いただいた健康診断結果を考慮した上で詳しくお話をうかがい、考えられる疾患をいくつか想定します。
その上で詳しい血液検査、必要に応じて腹部超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査などの画像検査も行い肝疾患を診断します。
それでも診断に苦慮する場合には、肝生検(肝臓の組織の一部を採取し、顕微鏡で観察する検査)を行います。

このように、当院の肝臓内科のように肝臓を専門とする診療科であっても、肝疾患の診断はさまざまな検査を経ないと困難なのが現状です。
ですから、健康診断の結果を自己判断することはお勧めできません。
ただ、自覚症状がないにも関わらず、健康診断の結果肝機能障害と判定された場合、どのような肝臓の病気の可能性があるのかは気になるものです。

そこでこの記事では、ASTやALT、ALP、γ-GTP、ビリルビンといった健康診断における肝機能障害の項目がそれぞれ何を意味するのか、そしてこれらが異常値を示すとどういった病気の恐れがあるのかを解説します。

飲酒だけでも肝機能障害と判定される

毎日のようにお酒を飲む人にとってもっとも気になるのは、健康診断の結果の異常が単に飲酒によるものなのか、それとも本当は飲酒とは関係がなく、何か隠れた肝臓の病気が存在しており、治療を要する状態なのではないかということではないでしょうか。

これをはっきりさせるためには、以下の点を確認します。
  ● 飲酒量
  ● 禁酒による数値の改善
  ● 他の肝疾患の有無
  ● 血液検査結果がアルコール性肝障害らしいかどうか

5年以上飲酒をしているか?

アルコール性肝障害を考える上での一つの目安に、「1日に日本酒3合またはビール2Lを5年間」というものがあります。
これよりも多い量のアルコールを摂取していれば、アルコール性肝障害の可能性が高いと考えられます。ただし、実際には、個人差があります。さらに、女性や高齢者はこれよりも少量のアルコール摂取でもアルコール性肝障害をきたしやすいです。

禁酒により値が改善すれば飲酒が原因

上で示した基準よりも多くの飲酒をしている方の場合、アルコールが原因の肝機能障害の可能性が高いです。しかし、それ以外が原因の肝機能障害の可能性も否定はできません。
そこで、これらを区別するために最もいい方法が、禁酒をして肝機能障害が改善するかどうかをみることです。

アルコールが原因の肝機能障害であれば、アルコールを断つことで肝機能障害が改善します。しかし、アルコール以外が原因の肝機能障害であれば、禁酒しても肝機能障害が改善しません。
禁酒で改善するかどうかを確認することは、アルコール性肝障害の診断上、重要です。

アルコール性肝障害の血液検査の4つの特徴

アルコール性肝障害の血液検査結果にはいくつかの特徴があります。これらの特徴に当てはまるかどうかも診断の助けになります。
その特徴とは、具体的には、

1 AST(後述)とALT(後述)の比が2以上となる
2 上昇したとしてもASTは500まで、ALTは300までと中等度にとどまる
3 γ-GTP(後述)はとても高くなりうる(1000以上になることも少なくない)
4 ALP(後述)は正常上限の3倍までにとどまる

の4つです。

血液検査の結果がこれらの特徴を持っている場合、アルコール性肝障害の可能性をより強く考えなければなりません。
このように、飲酒量、禁酒による肝機能障害の改善、血液検査の特徴を確認することでアルコール性肝障害の可能性を明らかにします。

健康診断の項目は主に酵素の名前

はじめに、健康診断における肝機能障害の実際の項目について解説します。
健康診断における肝機能障害の検査項目の名前ですが、これは血液中に含まれる酵素や色素の名前です。
健康診断における実際の検査項目名でもあるASTやALT、ALP、γ-GTPは、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、小腸、骨などに含まれる酵素、そしてビリルビンは赤血球に含まれる色素の名称です。

健康診断の結果、こういった酵素や色素の値が正常よりも高かったことを指して肝機能異常と呼びます。
ここで挙げた酵素が血液中に多いということは、肝臓をはじめとする臓器を構成する細胞が壊されている恐れがあるからであり、また、色素が血液中に多いということは、肝臓の働きが悪くなっていたり、胆汁の流れが悪くなっていたりする恐れがあるからです。

これらの検査項目の値を総合的に判断することで、肝機能障害の原因が何であるのか、また、それが急に起こっているのか、あるいは長く続いているのかなどを推測することができます。
さらに、肝障害が急に起こった場合では、それがすでにピークをすぎているのか、それとも、まだまだ悪くなっていく可能性があるのかを予想することができます。

ここではそれぞれの項目について、値が異常であった場合にどのようなことが体で起こっているのかについて、AST、ALT、ALP、γ-GTP、ビリルビンの順に説明します。

ASTは心筋、骨格筋、肝臓に含まれている

ASTは、心臓の筋肉である心筋、骨に付いていて体を支えたり動かしたりする筋肉である骨格筋や肝臓の中に多く存在しています。そのため、心臓、筋肉や肝臓に負担がかかり細胞が壊された場合に血液の中に移動します。その結果、血液検査でASTの値が高くなるのです。

つまり、ASTの値が高いということは、心臓や筋肉、肝臓の病気である可能性が考えられます。
ASTの値が高くなることで考えられる具体的な肝障害には、
A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、E型肝炎、EBウイルス感染に伴う肝炎、サイトメガロウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝、肝硬変、肝癌
などがあります。

肝細胞の破壊があればASTの値は上昇します。ですから、ASTはほぼすべての肝疾患で上昇しえます。
特にASTが著明に上昇していた場合、A型肝炎、急性B型肝炎、E型肝炎、EBウイルス感染に伴う肝炎などの病気が考えられます。これらの病気の場合、次で説明するALTの値も急性期に異常に上昇します。

ASTが軽度に持続的に上昇する場合、慢性B型肝炎、慢性C型肝炎などの病気が考えられます。これらの病気の場合、次で説明するALTの値も軽度の上昇が続きます。
ただ、ASTの値のみが高い場合は健康診断で肝機能異常と判定されたとしても、肝臓ではなく心臓や筋肉の病気である可能性もあります。

そこで健康診断では、血液中のASTだけでなくALTも同時に測定します。

ALTは肝臓にもっとも多い

先ほど説明したとおり、ASTの値が異常な場合は、肝臓だけでなく心臓や筋肉の病気の可能性もあります。
そこで、肝機能障害の診断の精度をより高めるため、血液中のALTも同時に測定します。
ALTは肝臓に最も多く含まれているため、肝臓にダメージがある場合に値が上昇します。
つまり、ALTの値が高いということは、肝臓の病気である可能性が考えられます。

ALTの値が高くなることで考えられる具体的な肝障害は、ASTの値が高いときに考えられるものと同様です。
すなわち、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、E型肝炎、EBウイルス感染に伴う肝炎、サイトメガロウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝、肝硬変、肝癌
などです。

ASTと同様、肝細胞の破壊があればALTの値も上昇します。ですから、ALTはほぼすべての肝疾患で上昇しえます。
特にA型肝炎と急性B型肝炎、E型肝炎、EBウイルス感染に伴う肝炎は、急性期だとこのALTと合わせて先ほど説明したASTも異常に上昇するという特徴があります。

また、慢性B型肝炎とC型肝炎はASTとともに軽度に上昇するのが特徴です。
ただ、肝機能障害といってもさまざまな病気の可能性が考えられるため、先ほど説明したASTとの比率を見ることによって具体的な病気を推測することができます。

AST/ALT比から推測される肝疾患

AST値とALT値のどちらが高いかを、ASTとALTの比の値(これを「AST/ALT比
といいます。)で表します。

AST/ALT比が1未満(AST値よりもALT値が高い)の場合は、肝機能障害がある程度の期間に渡って続いていると推測されます。具体的には慢性肝炎の可能性があります。
逆にAST/ALT比が1以上、すなわちAST値よりもALT値が低い場合には、肝炎の急性期、肝硬変、肝癌などの可能性が考えられます。

中でもアルコール性肝障害はここで説明しているすべての項目が上昇しますが、特にこのAST/ALT比と後ほど説明するγ-GTPの上昇が著しいのが特徴です。

ALPは胆汁の中に含まれる

ALPは胆汁の中に多く含まれています。胆汁は肝臓で作られる消化液のことで、脂肪の消化を助けています。

胆汁うっ滞でALPが上昇する

肝臓の重要な役割の1つはこの胆汁を作ること。そして、肝臓で作られた胆汁は食べ物の刺激によって胆管を通って十二指腸に流しだされます。そのため、血液中のALPの値に異常がないかを調べることで、肝臓や胆汁の流れに問題がないかを判断できます。

具体的には、何らかの原因で胆汁の流れが滞ると、胆汁中に含まれるALPが血液中に移動するため、検査結果で異常高値となります。

胆汁うっ滞の原因となる病気

胆汁の流れを悪くしてうっ滞させる病気には、胆管のがん、膵臓がん、十二指腸にある胆管の出口のところにできるがん、胆管結石、薬が原因の肝機能障害、原発性胆汁性胆管炎という免疫異常が原因の病気などがあります。

このようにALPの値によって薬が原因の肝機能障害だけでなく、胆管から十二指腸にかけてのがんをはじめとする重大な病気を知ることができます。

ALPは広く全身に存在する
ALPと肝臓や胆汁の関係について述べました。しかし、実際は、ALPは肝臓や胆汁中、胆管だけでなく、腎臓、骨、十二指腸、小腸などを代表とする全身のさまざまな臓器に含まれています。

ですから、ASTの場合と同様、「ALPの値が高い」=「肝臓の働きや胆汁の流れが悪い」と判断せずに、それ以外の原因でALPが上昇している可能性についても考えることが重要です。

胆汁うっ滞以外でALPが上昇するケース

では、肝機能障害や胆汁うっ滞以外のどのような場合にALPは上昇するのでしょうか。骨粗鬆症、くる病、骨軟化症などの骨の病気、いろいろながんの骨転移、潰瘍性大腸炎などの腸の病気、慢性腎不全などの腎臓の病気、糖尿病などでALPは上昇します。
ちなみに、ALPは骨の発育が盛んであると血液中に多く流れ込みます。ですから、骨がたくさん作られている成長期の子供では、大人と比べて高い値になります。

γ-GTPはお酒による肝障害で上昇することで有名

γ-GTPはお酒を飲むことで値が上昇することで有名ですが、実際にアルコールに対する反応が鋭敏であるという特徴があります。そのため、当然ですが、お酒をよく飲む人ではγ-GTPの値が高くなります。さらに、飲むお酒の量が増えれば増えるほど、ますますγ-GTPの値は高くなります。一方、断酒することによって約2週間の半減期で減少します。
半減期とは、半分に減るのにかかる時間のことです。

このようにγ-GTPの値は飲んでいるお酒の量とよく相関します。そのため、この数値を定期的に測定すると、しっかりと禁酒を守れているのか、あるいは飲酒を再開してしまったのかなどの飲酒状況を推し量ることができます。
これは、γ-GTPがお酒によって誘導されるという性質をもっているからです。お酒の他には、向精神薬、抗てんかん薬、睡眠薬などの一部の薬剤によってもγ-GTPは誘導されます。

γ-GTPがアルコールやある種の薬によって誘導されて血液中に増えるという現象は、肝機能障害と関係なく、単独で起こることもあります。この場合には、肝細胞が壊されているわけではないため、ASTやALTの値は上昇しません。
γ-GTPの値が目立って上昇しており、ASTやALTの値の上昇も伴っているときには、アルコール性肝障害に至っていると考えられるため、肝臓をいたわるために禁酒することが必要です。
γ-GTPはアルコールの他には、胆汁うっ滞、薬物性肝障害、脂肪肝などが原因でも上昇します。

また、γ-GTPは肝臓の他に、腎臓や膵臓などにも含まれています。そのため、これらの臓器に問題が起こったときにも血液中に漏れ出し、血液検査で数値が高くなります。
また、ALPと同様、胆汁うっ滞でも、血液検査で高値になります。

ビリルビンは肝機能低下や胆汁うっ滞で上昇する色素

ビリルビンは、赤血球に含まれている黄色い色素です。

直接ビリルビンと間接ビリルビン

ビリルリンには「直接ビリルリン」と「間接ビリルリン」の2つがあります。
健康診断や医療機関でではこの2つを合わせた「総ビリルリン」をまず測定します。
総ビリルビンの値に異常があった場合には、その原因を推測するために直接ビリルビンと間接ビリルビンの値を調べます。

間接ビリルリンは、赤血球が古くなったり、損傷を受けたりして壊れると細胞の中から血液中にでてきます。

直接ビリルビンは、関節ビリルビンが肝臓で処理をされて形を変えたものです。胆汁の中に移動して胆管を通り、十二指腸に排泄されます。

肝機能低下で間接ビリルビンが上昇する

肝臓はその働きが弱まると、間接ビリルビンを処理できなくなります。そのため、血液中に間接ビリルビンがたまるためにその濃度が上昇し、血液検査で数値が高くなります。
逆に、血液検査で間接ビリルビンの値が異常に高かった場合には、肝臓の働きが低下している病態が考えられます。

肝機能低下は、次の2つの場合に分けて考えると理解しやすいです。

1つ目は、急性肝炎の結果、肝細胞障害が強いために、肝機能が低下したケース。

具体的には、A型肝炎、急性B型肝炎、E型肝炎、EBウイルス感染に伴う肝炎、薬剤性肝障害、自己免疫性肝炎を初めて発症した時などがあります。
これらの病気では、ビリルビンの上昇の他に、以下で解説するASTやALTという項目の値も著しく上昇することが多いです。

2つ目は、慢性肝疾患が原因で長期に渡って肝機能障害が続いたために、肝臓の働きが悪くなったケース。

具体的に肝硬変です。肝硬変はさまざまな肝臓の病気が原因で肝細胞障害が長い間続いた結果、肝臓が元通りに戻る力を失い、肝臓の機能が失われた状態です。

このことから、肝硬変の原因になるのは慢性肝疾患であることが分かるはずです。代表的なものに、慢性B型肝炎、C型肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、原発性胆汁性胆管炎、アルコール性肝障害などがあります。
これらの病気では、ASTやALTの値は軽度の上昇にとどまることが多いです。

胆汁うっ滞で直接ビリルビンが上昇する

そして直接ビリルビンは上で解説したALPやγ-GTPと同じように胆汁の中に含まれています。ですから、ALPやγ-GTPの場合と同様、胆汁の流れが悪くなる病気の場合には、直接ビリルビンが高値になります。

ビリルビン上昇の原因の見分け方

次に、これまでに学んだAST、ALT、ALP、γ-GTP、ビリルビンの値を総合的に判断して、さらに病気を絞り込んでいく際の考え方について、さらにかいつまんで解説します。

ALP、γ-GTPの値から黄疸の原因を区別する

肝臓が悪いと出る症状の有名なものに、黄疸があります。黄疸は、ビリルビンの値が高くなり、皮膚や眼の白目の部分が黄色くなった状態のことです。
黄疸、すなわち、ビリルビンの上昇は、肝機能低下と胆汁うっ滞によって生じることを説明しました。
黄疸が高いときに、ALPとγ-GTPの値を確認することでこの2つを見分けることができます。

ビリルビンの上昇に伴い、ALPとγ-GTPの値が高くなっていれば、胆汁うっ滞が黄疸の原因であると考えられ、ALPとγ-GTPの上昇が伴っていなければ、肝機能低下が黄疸の原因であると考えられます。
さらにいうと、胆汁うっ滞が原因の黄疸では、ビリルビンの中でも直接ビリルビンの値が、肝機能低下が原因の黄疸では、間接ビリルビンの値が優位に高くなります。

ここまでで、血液検査における肝機能障害の具体的な項目であるAST、ALT、ALP、γ-GTP、ビリルビンについて説明しました。

肝がんの早期発見は健康診断では困難!

健康診断で肝機能障害と判定された方の中には、肝がんを心配されている人もいらっしゃるかもしれません。
実際、2017年のデータから、日本人の約2人に1人が一生涯で少なくとも一度、いずれかのがんになることが知られています。そして、肝がんは死亡数の第5位です。

ただ、残念ながら健康診断の血液検査の項目で肝がんを早期発見するのはとても困難です。
早期の肝がんは血液検査で異常な値を認めることがほぼないため、健康診断でも見過ごされがちです。さらに、肝臓は沈黙の臓器と言われていることからも分かる通り、がんができてもよほど進行しないと症状がでません。例えば、早期の胃がんでも胃がむかむかしたり食欲がなくなったりといった症状はしばしば見られます。しかし肝がんの場合には、具合いの悪さを感じて病院を受診したときには、かなり進行してしまっているということも珍しくありません。

そのため、実際に肝がんが早期発見されるのは、慢性肝疾患や肝硬変の方が腹部超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査といった画像診断を受けたときがほとんどです。肝がんは、健康な肝臓にできることはまれです。基本的に、何らかの肝臓病をもっている人にできます。日本では、C型肝炎がベースにある場合が7割くらい、B型肝炎が1割くらいで、残りはアルコール性肝障害や非アルコール性脂肪性肝炎などです。
これらの病気では肝がんができやすいため、3ヶ月ないし6ヶ月毎に血液検査で腫瘍マーカーを調べる上に画像診断も行っています。もともとがんができやすい背景がある方がそれを早期発見する目的で定期的に検査をうけることで、ようやく肝がんは早期発見できます。

このように、肝がんの早期発見は、それを目的として定期的に検査を受け続けないと難しいです。しかし、健康診断で異常が認められたために医療機関を受診し、精密検査の画像診断を受けた結果、予期せず肝がんが見つかる方もときどきいます。
ですから、健康診断で肝機能障害が認められた場合、肝炎や肝硬変だけでなく、肝がんを早期発見できる可能性があるという意味でも精密検査を受けることを強くお勧めします。早い段階で肝がんが発見されれば、治る可能性は高くなります。肝がんでは病状に応じて様々な治療法があります。外科手術による切除、肝がんをくり抜くように焼くラジオ波焼灼療法、血管カテーテルを使った肝動脈塞栓術、放射線治療などです。近年、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により、化学療法が大きく進歩しており、かりに進行した状態で発見されたとしても、有効な治療が可能となっています。

まとめ

この記事では、健康診断で肝機能障害を認めた場合にどのような肝臓の病気が考えられるのかをAST、ALT、γ-GTP、ビリルビン値に着目して解説しました。

おわりに

当科は、肝臓病を専門に診ています。具体的には、さまざまな肝炎やそれらが原因で起こる肝硬変、さらにそこから発生する肝癌などです。
多くの病院では、肝臓の病気は消化器の病気の一分野として、消化器内科が診ています。肝臓内科という独立した診療科がなく、消化器内科の医師が肝臓の病気も診療しているという医療機関がほとんどです。

当院は、消化器内科とは異なる独立した診療科として、肝臓内科が存在している数少ない病院です。
私達は、数ある消化器の病気の中でも、肝臓の病気に特化して、日々の診療に勤しんでいます。当院ほど肝臓の病気の患者さんが多く集まっている病院はいくつもありません。そのため、私達には、蓄積された経験と実績があります。
健康診断における肝機能障害のご相談はもちろんのこと、肝臓の病気に関するお悩みはぜひ私達にお任せいただければ幸甚です。

初診の予約は随時受け付けています。緊急で診療が必要な方の場合には、当日の受診の相談も受け付けております。
ぜひ、お気軽にご相談ください。

久保田 翼
今村 潤

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