耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍外科

専門分野

主な疾患の症状と特徴、治療について

※各部位の頭頸部癌の疫学に関しては、主として、日本頭頸部癌学会が施行している日本国内における頭頸部悪性腫瘍全国登録の解析データを参考に記載しています。

1 口腔癌

難治性の口内炎、口腔からの出血、口内痛、頸部リンパ節腫脹などがある場合は口腔癌の可能性があります。日本では、頭頸部癌はすべての癌の約5%を占めるとされますが、口腔癌は甲状腺癌を除く頭頸部癌のうち、30−35%程度の頻度で発症し、頭頸部癌の中では最も頻度の高い癌です。60−70歳台が好発年齢ですが若年者にも多く発症します。男女比は1.5:1と他の部位の頭頸部癌に比較して女性に多いのが特徴です。病理組織は扁平上皮癌が殆どです。約50%が舌に、次いで下口唇に10%強、続いて上口唇・頬粘膜・口腔底にそれぞれ9%程度ずつの頻度で発症します。初診時に頸部リンパ節転移のある割合は約30%ですが、後発頸部リンパ節転移の発症が多く、その制御が問題となります。咽喉頭癌に比べて化学放射線療法が効きづらく、治療の主体は手術療法になります。早期癌では小線源治療が行われる事もあります(当院では施行していません)。進行癌では広汎な切除と再建手術が必要になり、音声や嚥下機能に問題が生じます。

2 鼻・副鼻腔癌

鼻出血や血性鼻漏、頬部の痛みや腫れが続く場合は、鼻腔癌や副鼻腔癌の可能性があります。両者を合わせると、甲状腺癌を除く頭頸部癌のうち、7%程度の頻度で発症します。60−70歳台が好発年齢で、男女比は2−3:1です。病理組織は扁平上皮癌が殆どですが、稀に悪性黒色腫や嗅神経芽細胞腫などの事があります。副鼻腔癌の中では上顎洞癌が最多で、次は篩骨洞癌の順です。前頭洞癌や蝶形骨洞癌は稀です。早期癌であれば内視鏡手術で切除できる事もありますが、進行してから発見される場合が多く治療に難渋します。多くは抗癌剤、手術、放射線療法を組み合わせて治療します。扁平上皮癌以外の病理組織型の場合、陽子線治療や重粒子線治療が先進医療の適応となる事があります(当院では施行していません)。上顎洞癌では超選択的に抗癌剤を動脈注射しつつ放射線療法で加療し、顔面の形態を温存して完治させる方法も試みられています。

3 上咽頭癌

鼻出血、難聴、複視などがある場合は、上咽頭癌の可能性があります。甲状腺癌を除く頭頸部癌のうち、3%程度の頻度で発症する稀な癌です。60歳台が好発年齢ですが、40−80歳まで幅広い年齢で認められます。男女比は3:1です。病理組織は扁平上皮癌が殆どです。進行してから発見される場合が多く、初診時80−90%に頸部リンパ節転移が認められます。遠隔転移を来たしやすく、初診時既に遠隔転移を有する割合が10%程度あります。化学放射線療法で治療する事が殆どです。EB(Epstein Barr)ウイルスが発癌に関与する事が知られており、中国東南部、台湾、香港など、東南アジアで高頻度に発症します。

4 中咽頭癌

咽頭痛、のどの違和感やつかえ感、頸部リンパ節腫脹などがある場合は中咽頭癌の可能性があります。甲状腺癌を除く頭頸部癌のうち、15%程度の頻度で発症します。60−70歳台が好発年齢です。男女比は6−7:1です。病理組織は扁平上皮癌が殆どです。半数は側壁(口蓋扁桃)に発症し、初診時60−70%に頸部リンパ節転移が認められます。原発巣が扁桃腺の内部に隠れていて発見されづらい事があり、当初は原発不明癌と診断される場合があります。早期癌は手術のみで根治可能な事がありますが、多くは進行癌のために化学放射線療法や手術+(化学)放射線療法で加療されます。HPV(ヒトパピローマウイルス)が発癌に関与する事が知られており、特に欧米でその割合が多いと言われていますが、日本でも近年の多施設共同研究により、中咽頭癌全体の50%、側壁癌の60%はHPVが発癌に関与している事が判明しています。また、HPV発癌の中咽頭癌はそうでないものに比べて予後が良い事が知られています。

5 下咽頭癌

咽頭痛、嚥下痛、耳痛、のどの違和感やつかえ感、頸部リンパ節腫脹などがある場合は下咽頭癌の可能性があります。甲状腺癌を除く頭頸部癌のうち、20%程度の頻度で発症します。60−70歳台が好発年齢です。男女比は11:1です。病理組織は扁平上皮癌が殆どです。70%は梨状陥凹に発症し、次いで後壁、輪状後部の順です。初診時60−70%に頸部リンパ節転移が認められます。原発巣がのどの深部にあって発見されづらい事があり、中咽頭癌と同様に当初は原発不明癌と診断される事があります。早期癌は手術のみで根治可能な事がありますが、進行癌のために化学放射線療法や手術+(化学)放射線療法で加療される事が多いです。しかし、10年前に比べると早期発見の機会が増加しており、リンパ節転移のない早期癌の状態で発見される割合が増えています。アルコールが発癌に関与する事が知られており、特にアルコールで顔が赤くなる人が長期に飲酒を継続している場合、或いは習慣的にアルコールを多飲する人に、下咽頭癌が発症する危険が高いと言われています。一般に下咽頭癌の25−35%に食道癌が合併すると言われ(近年の検討では食道表在癌を含めると更に多いと言われています)、治療開始前の上部消化管内視鏡検査は必須です。進行下咽頭癌の手術では下咽頭だけでなく喉頭も切除して遊離空腸移植などの再建手術が必要になり、音声機能を喪失する事が大きな問題です。

6 喉頭癌

嗄声、咽頭痛、のどの違和感や閉塞感、血痰などがある場合は喉頭癌の可能性があります。甲状腺癌を除く頭頸部癌のうち、20%程度の頻度で発症します。60−70歳台が好発年齢です。男女比は14:1と圧倒的に男性に多い癌です。病理組織は扁平上皮癌が殆どです。60−70%は声門(声帯)に、30%は声門上に発症し、声門下の発症は2%程度とごく僅かです。初診時に頸部リンパ節転移を有する割合は、声門癌では10%未満と頭頸部癌の中で最も少ないですが、声門上癌では約半数にリンパ節転移が認められます。喉頭癌は全体として頭頸部癌の中で予後の良い癌とされていますが、特に声門癌は最も予後の良い癌です。声門癌が嗄声を主訴として早期に来院するのに比べ、声門上癌と声門下癌では嗄声が初発症状となる事は少なく、発見が遅れる傾向にあります。早期癌は手術や放射線単独療法で治療しますが、進行癌の場合は化学放射線療法や手術+(化学)放射線療法で加療します。声門癌では喫煙が発癌に深く関与する事が知られています。進行喉頭癌の手術では喉頭が温存できず、音声機能を喪失しますが、食道発声で会話が可能となる場合があります。近年はボイスプロステーシスの進歩により、食道発声ができない人も代用音声を獲得する事ができる様になっています。

7 唾液腺腫瘍、唾液腺癌

耳下部や顎下部のしこりは耳下腺腫瘍や顎下腺腫瘍などの唾液腺腫瘍である可能性があります。耳下腺深葉腫瘍は稀に副咽頭間隙に進展して、あまり症状がないまま大きく発育する事があります(副咽頭間隙腫瘍)。全体の80−85%は耳下腺に、5−10%は顎下腺に発症し、舌下腺腫瘍は稀です。良悪性比は3:1程度とされています。2005年のWHO分類では唾液腺腫瘍の病理は、良性腫瘍は10種類、悪性腫瘍は23種類に分類されており、その診断が難しいとされています。治療前に顔面神経麻痺がある場合は悪性腫瘍(癌)を疑います。
唾液腺良性腫瘍の多くは多形腺腫で、ワルチン腫瘍がそれに続きます。ワルチン腫瘍は喫煙との因果関係が深く、顎下腺にはほとんど発生しません。多形腺腫は悪性化する事があります。治療の主体は手術療法で、良性の場合は顔面神経を温存します。
唾液腺癌は、甲状腺癌を除く頭頸部癌のうち、5%程度の頻度で発症します。60−70歳台が好発年齢で、男女比は2:1です。65−70%は耳下腺に、25−30%は顎下腺に発症し、舌下腺癌は稀です。治療の主体は手術療法ですが、癌の場合は顔面神経を切断する事があります。中でも導管癌は高悪性度の癌ですが、遠隔転移していても抗癌剤が著効する場合があります。

8 甲状腺腫瘍、甲状腺癌

前頸部のしこりは甲状腺機能亢進症、慢性甲状腺炎や腺腫様甲状腺腫などの良性疾患、甲状腺良性腫瘍や甲状腺癌である可能性があります。
甲状腺癌の頻度はすべての癌の1%程度です。50歳台が好発年齢で、次いで40歳代、30歳代の順に多く、男女比は1:3と女性に多い癌です。その90%以上が乳頭癌で、他に濾胞癌、髄様癌、低分化癌、未分化癌がありますが稀です。乳頭癌や濾胞癌の10年生存率は90%を超え、特に45歳未満の発症では予後が良い事が知られています。治療の主体は手術療法です。原発が小さくても頸部リンパ節転移や遠隔転移を来す事が知られており、遠隔転移が多発していても、甲状腺全摘出術後にヨード内用療法を行って加療する事が可能な症例もあります。近年では甲状腺癌の分子標的薬が発売され、ヨード内用療法無効例で使用されています。

9 突発性難聴

未だに原因は良く分かっていませんが、急に耳の聞こえが悪くなる突発性難聴と呼ばれる急性感音難聴が発症する事があります。耳と体と精神の安静、ステロイドの投与などを行って加療します。難聴が高度の場合は入院加療が必要となる事があり、高気圧酸素治療(当院では施行していません)を行う事があります。稀に聴神経腫瘍という良性の腫瘍が原因である場合があり、MRI検査は必須です。難聴は回復しない事があります。

10 顔面神経麻痺

急に顔面神経が麻痺して、顔に力が入らなくなる顔面神経麻痺が発症する事があります。ヘルペスウイルスが関与しているのではないかとも言われています。ステロイドの投与などを行って加療します。糖尿病の合併がある場合は入院して加療する事もあります。麻痺が高度で電気生理学的検査(ENoG)で予後不良とされた場合は全身麻酔をかけて顔面神経管開放術(当院では施行していません)を行う事があります。麻痺は回復しない事があります。

11 めまい

めまいは、中枢性疾患(頭蓋内病変)に伴うめまい、突発性難聴に伴うめまい、三半規管が原因で起こるめまい(良性発作性頭位めまい症)、前庭神経炎、メニエール病などいろいろな病因があり、複雑な病態です。聴力検査、眼振検査、電気眼振図などの聴覚検査や平衡機能検査を施行して診断し、それぞれの病態に応じた治療を行います。

12 慢性中耳炎(慢性穿孔性中耳炎、真珠腫性中耳炎)、慢性外耳道炎

難聴や耳漏が続く場合は上記疾患の可能性があります。真珠腫性中耳炎の場合、放置すると頭蓋内合併症を引き起こす危険性があります。慢性外耳道炎を放置すると非常に稀ですが、外耳道癌を発症する事があります。特に血性の耳漏が続く場合は生検等の精査が必要になります。(中耳炎の手術や外耳道癌の手術は、当院では現在施行していません。)

13 急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎・鼻茸

かぜの後に膿性鼻漏、鼻閉、頭痛や頬部痛が続く場合は、急性副鼻腔炎を発症している可能性があります。副鼻腔X線や副鼻腔CTなどの検査を行って診断を確定します。適切な抗生剤投与で治癒する場合が多いですが、時に慢性化します。慢性化して 鼻茸(ポリープ)を伴っている場合は保存的加療のみで軽快しない場合も多く、内視鏡手術の適応となります。喘息を合併した副鼻腔炎は好酸球性副鼻腔炎と呼ばれ難治性です。

14 急性扁桃炎、習慣性扁桃炎、扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍、扁桃病巣感染症

かぜの後などに口蓋扁桃が急性の細菌感染症を起こして急性扁桃炎を発症する事があります。かぜには抗生剤は投与しませんが、急性扁桃炎になったら抗生剤の投与が必要です。扁桃炎が増悪して扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍を発症する事があり、この場合は咽頭痛の増悪、開口障害などが出現して食事摂取も困難となるので、入院して膿瘍の切開排膿、補液、抗生剤の点滴を行う必要があります。扁桃周囲膿瘍を発症した場合、習慣性扁桃炎となった場合には、口蓋扁桃摘出術の適応となります。扁桃腺が原因でIgA腎症や掌蹠膿疱症などの病巣感染症を起こしている場合も口蓋扁桃摘出術の適応となります。

15 声帯ポリープ、ポリープ様声帯

大きな声を無理に出す事や多量の喫煙を長期間継続すると、声帯ポリープやポリープ様声帯を発症する事があります。声の安静や禁煙を守るなどして保存的に治療しても軽快しない場合は、顕微鏡下に喉頭微細手術を行う事があります。

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