がん・感染症センター都立駒込病院

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放射線診療科(治療部)

前立腺がんの放射線治療

はじめに

前立腺がんは、米国男性でもっとも罹患率の高いがんで、男性のがん死亡の2番目の原因とされています。日本では、男性で4番目の罹患率(がんの統計2014年:1位胃がん、2位肺がん、3位大腸がん)であり、高齢化や食生活の欧米化、PSA(腫瘍マーカー)検診の普及などにより、今後さらに増加すると推定されています。

前立腺がんの放射線治療
前立腺がんに対する強度変調放射線治療(IMRT)の一例
直腸や膀胱を避けて、前立腺に集中した良好な線量分布がえられる。

早期の前立腺がんに対する放射線治療

根治的な治療の対象となるのは、骨転移やリンパ節転移のない早期の前立腺がんです。前立腺がんでは、腫瘍マーカーであるPSA値や悪性度の指標となるGleason Score (グリソン・スコア)などの因子から、治りやすさ・再発・転移の可能性を示すリスク分類が用いられます(表1)。いずれも根治的な治療の対象となりますが、PSAが極端に高い場合潜在的な転移の可能性が高くなり、根治的な治療がすすめられないこともあります。

<表1>
リスクグループ
低リスク
中リスク
高リスク
PSA
4-10 10-20 20<
Gleason Score
-6 7 8-10
局所進行度
被膜内にとどまる 被膜外や隣接臓器に浸潤

根治的な治療の選択肢としては、手術、外部放射線治療、組織内照射があります。当院では、外部放射線治療としてX線を用いた強度変調放射線治療(IMRT)を積極的に行っております。また、中リスクや高リスクでは、治療効果を高めるために原則としてホルモン療法を併用しています。

1.低リスク前立腺がん

潜在的な転移のリスクが非常に少ないため、前立腺に対する局所治療のみで根治が期待できます。治療選択肢としては、手術、外部放射線治療、小線源治療があります。
当院では、76Gy/38回のスケジュールでIMRTを実施しています。

2.中リスク前立腺がん

手術、外部放射線治療とも、適応となります。
当院では、ホルモン療法を先行し、76Gy/38回のスケジュールでIMRTを併用します。ホルモン療法はIMRT終了と同時に終了し、期間は6ヶ月程度です。

3.高リスク前立腺がん

潜在的な転移のリスクが高いため、ホルモン療法を併用します。
当院では、ホルモン療法を先行し、76Gy/38回のスケジュールでIMRTを併用します。ホルモン療法はIMRT後も継続し、原則として2年間実施します。

非常にリスクの高い前立腺がんに対する放射線治療

診断時のPSA値が非常に高い(100以上)、また、CTやMRIで骨盤リンパ節転移のある前立腺がんは、再発や遠隔転移のリスクが相対的に高くなるため、全身治療であるホルモン療法を主体とした治療が実施されます。ホルモン療法の効果が非常に高く経過が良好な場合、追加治療として放射線治療が検討されることもあります。
骨盤リンパ節転移のある症例でホルモン療法後の経過が良好な場合、骨盤照射を実施することがあります。

前立腺がんの放射線治療
骨盤照射(IMRT)の線量分布

前立腺がんの手術後再発に対する放射線治療

前立腺全摘出術後に、いったん0になったPSA値が漸増し局所再発が疑われることがあります。このような場合、前立腺床(前立腺があった場所)に対する放射線治療の適応となります。当院では、三次元4門照射を用いて64.8Gy/36回のスケジュールで実施します。
PSA漸増に加えてCTやMRIで前立腺床に明らかな再発病巣が認められる場合には、IMRTを用いて70Gy/35回のスケジュールで治療を行います。

前立腺がんの放射線治療
前立腺床の4門照射の線量分布

前立腺がんの放射線治療
前立腺床のIMRTの線量分布写真

前立腺がんに対する強度変調放射線治療(IMRT)とは

前立腺は、上に膀胱、後ろに直腸が接しているため、従来の放射線治療では膀胱と直腸を守って前立腺に十分な線量を投与することが困難でした。
従来の三次元照射と比較すると、IMRTでは線量分布の最適化によって前立腺に線量を集中させながら、直腸や膀胱など周囲の正常組織への線量低減が可能となります。それにより、治療効果を維持しつつ、長期的な副作用を低減することが可能と考えられています。
また、IMRTの優れた線量集中性に加えて、最近では画像誘導放射線治療(IGRT:Image-Guided Radiation Therapy)という技術が普及しています。IGRTとは、日々の治療の直前に直交二方向X線透視画像やCT画像を撮像して、前立腺の位置照合を行う技術です。前立腺がんの放射線治療では、膀胱内の尿や直腸内の便やガスによる前立腺の位置変動が問題となるため、IGRTの利用で、きわめて位置精度の高い放射線治療が可能となっています。

前立腺がんの放射線治療
3D-CRT                     IMRT
三次元照射(3D-CRT)とIMRTの線量分布比較

IMRTを用いることで膀胱と直腸を避けるような線量分布が描けます(矢印)。

前立腺がんの放射線治療
IGRT実施中の写真:治療計画時の写真と、治療時の場所のずれを修正してから治療を開始します。

将来展望

1.治療期間の短縮

現在の前立腺がんに対する標準的な放射線治療では、治療期間が2ヶ月程度の長期にわたるため、患者さんの通院の負担が大きいと考えられています。
前立腺がんでは、1回に照射する線量を増加させ、総治療期間を短縮する治療戦略の有効性が示唆されています。1回線量の増加により、周囲正常組織の副作用増加が懸念されるため、IMRTとIGRTを利用した治療期間短縮が期待されています。海外では、1回2Gy(総線量74Gy/37回)のスケジュールと1回2.5Gy(総線量70Gy/28回)のスケジュールを比較する臨床試験が実施され、結果が待たれます。日本においても、1回2.5Gy(総線量70Gy/28回)のスケジュールを用いた多施設共同臨床試験が実施され、経過観察中となっています。

2.定位放射線治療

定位放射線治療は、位置精度を高めることにより1回線量をさらに増加させて、治療期間をさらに短縮する治療です。定位放射線治療は、当初脳転移や早期肺癌などで臨床応用されてきましたが、近年前立腺がんに対しても試みられています。

セカンド・オピニオン

基本的に、初診時のPSA値が100程度までの、画像的に転移の認められない前立腺がんが、IMRTの適応となります。前立腺がんに対するIMRTのセカンド・オピニオンを希望される場合には主治医と相談の上初診予約受付( 03-3823-2101;平日8:30~17:15)にお電話いただき、予約をおとりください。

2015年8月更新 二瓶 圭二

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