大腸がん肝転移の診断と治療について

大腸がん肝転移の診断と治療について

投稿者:外科部長 山口達郎

1.大腸がん肝転移の割合

悪性腫瘍、いわゆる「がん」は様々な臓器(肝臓や肺など)に転移する可能性があります。大腸がんでは、初めて病気が見つかった時点で、2割近い患者さんに肝臓や肺などの転移がみられ、中でも最も多く転移がみられる臓器が「肝臓」で、およそ半数を占めます。また、初回治療時にがんが取り切れたと判断されても約7%の患者さんが肝臓に再発すると言われています。

2.大腸がん肝転移の診断と治療のために必要な検査

採血

肝機能検査

大腸がんが肝臓に転移すると、一部の肝細胞が壊れるため、壊れた肝細胞から逸脱した酵素の値が上昇することがあります。AST(GOT)やAST(GPT)、胆道系酵素のγ-GTPなどが上昇しますが、脂肪肝や肝炎、胆石の時にも上昇します。
その他、肝臓の機能を調べるために、凝固機能(一部の凝固因子が肝臓で作られるため)や肝炎の有無などを検査します。

腫瘍マーカー

腫瘍マーカーは、がんが産生する物質です。大腸がんの患者さんでは、CEA(carcinoembryonic antigen: がん胎児性抗原)や、CA19-9(carbohydrate antigen 19-9)が上昇することが知られています。しかし、これらの腫瘍マーカーは、肝転移のみで上昇するわけでもなく、大腸がんのみで上昇する訳でもありません。
CEAは、大腸がんの他に、食道がん、胃がん、肺がん、乳がん、肝がん、甲状腺がん、卵巣がん、子宮がんでも上昇します。また、肝炎や糖尿病、腎不全、喫煙などでも上昇することが知られています。
CA19-9は、大腸がんの他に、膵臓がん、胆道がん、胃がん、肝がん、肺がん、乳がん、卵巣がんでも上昇します。また、肝炎や糖尿病、胆嚢炎、膵炎、子宮筋腫、良性卵巣腫瘍でも上昇することが知られています。

ICG(インドシアニングリーン)検査

肝臓の予備能力を調べる検査です。ICGは、血液に入ると直ぐに肝細胞に取り込まれ胆汁へと排泄されます。この性質利用して、ICG注射15分後にどれだけICGが残留しているかを測定することにより、肝臓の予備能力を調べます。
正常値は10%以下ですが、肝硬変などの場合は30%以上にまで上昇します。
肝臓の手術を受ける際には必要な検査で、予定した肝切除を行っても身体を支えるための予備能力が残されるかを判断します。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査は、痛みがなく放射線を浴びることもないため、最も手軽に行える非侵襲的検査です。超音波検査では、大腸がんの肝転移は、外周が黒く内部が白いリング状の腫瘤として見えます。
消化管のガスの影響を受けることがあるため検査は空腹時に行なうことがよいとされています。

CT検査

放射線を利用した断層検査です。造影剤を用いると肝臓の正常部分と腫瘍のコントラストがはっきりします。ただし、ヨードにアレルギーのある患者さんには使用できません。

MRI検査

磁力を利用した断層検査です。CT検査で良性腫瘍との区別が困難な場合でも、組織の中の状態を画像化することが出来るため、良性悪性の区別が出来ることがあります。
ただし、身体の中に金属が入っている患者さんや閉所恐怖症の方はMRI検査を受けることができません。

PET検査

がんは、増殖のために多くの糖分を必要とします。その性質を利用した検査がPET検査です。あらかじめ目印を付けた糖分を注射で体内に入れます。その後、身体全身を撮影すると糖分を多く取り込んだところが赤くなります。肝臓以外に転移している病変がないかを診断するために用いられます。
脳は多くの糖分を必要とするため、常に赤くなります。また、PET検査で用いた薬剤は腎臓から尿へと排泄されるため、尿管や膀胱も赤くなります。
ただし、糖分を利用した検査ですので、コントロール不良の糖尿病の患者さんでは、診断の精度が落ちることがあります。

3.大腸がん肝転移の治療

手術

大腸がん肝転移に対する最も効果的な治療は手術(肝切除術)です。近年、肝切除の適応基準も広がり、以前は困難と言われた病変でも手術できるようになりました。病状によっては1度で切除しきれない場合でも、門脈塞栓などの工夫により二段階切除を行ったりします。

  • 当院では、腹腔鏡による肝切除を国内でも早く導入し、数多くの治療経験があります。また、大腸がんと肝転移を同時腹腔鏡手術も行っています。

化学療法(抗がん剤治療)

手術が適さない場合は化学療法が勧められますが、様々な効果が期待されます。

  • 肝転移の縮小
  • 微小(みえない)転移への効果

当初、手術が出来ないと考えられた病変でも、化学療法の効果により切除出来ると判断出来た場合は、肝切除を行います。
ただし、化学療法は肝機能障害を引き起こす可能性があるため、漫然と化学療法を継続することはよくありません。切除のタイミングを逃さないことが重要です。

4.まとめ

大腸がん肝転移は、大腸外科・肝臓外科・腫瘍内科・放射線科・病理科など多くの診療科が協力して診断と治療に当たります。一口に「大腸がん肝転移」と言っても全く同じ肝転移は無く、患者さんごとに肝転移の大きさや場所、数などが異なります。また、患者さんの持つ社会背景(通院距離・仕事など)も異なります。主治医とよく対話し、治療方針を考えていくのが重要と考えます。

執筆者紹介

山口 達郎(やまぐち たつろう)

こまごめコラム執筆者
がん・感染症センター都立駒込病院 大腸外科 部長
専門分野:大腸外科・肛門外科、遺伝性腫瘍(特に遺伝性大腸癌)、大腸癌化学療法
資格:日本外科学会 専門医・指導医、日本消化器外科学会 専門医・指導医、日本大腸肛門病学会 専門医、日本がん治療認定医機構 暫定教育医、日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、日本家族性腫瘍学会 評議員・編集委員、日本家族性大腸腺腫症研究会 世話人、臨床遺伝専門医、臨床研修指導医、International Journal Clinical Oncology: Editorial Board
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