がんの痛みはこう治療する!あなたのお薬について知っておいていただきたいこと

がんの痛みはこう治療する!あなたのお薬について知っておいていただきたいこと

痛み治療の目標

がんの痛み治療には3つの目標があります。

  1. 痛みに妨げられない睡眠時間の確保
  2. 安静にしていれば痛みが消えている状態の確保
    「まず1の目標から」
  3. 起立したり体を動かしたりしても、痛みが消えている状態の確保。まず1の目標をクリアするところから、ひとつずつ解決していきます。

痛みの緩和治療(概論)

がんの痛み治療には、主に4つの方法があります。

  1. 薬物療法:痛み止めの薬を使う方法で、最も一般的です。
  2. 神経ブロック:神経や神経周囲に局所麻酔薬などを注入することにより痛みを緩和する方法で、主に麻酔科医などの専門家が行います。
  3. 放射線療法:主に骨転移などに対して放射線をあてることで痛みを取る方法もあります。専門の施設で行います。
  4. 生活の工夫:痛みが少なく負担のかからない動作の方法を考えたり、コルセットを使用して保護をしたり、温めたり冷やしたり、気分転換をしたりする方法もあります。

痛みの原因や病状により、これらを組み合わせて治療していきますが、まず①と④を組み合わせて対処することが基本です。
ここでは、主に①の薬物療法について説明いたします。

がんの痛みに対する薬物治療

標準的ながん疼痛治療法

WHO(世界保健機関)は、痛みの強さを3段階に分け、その段階に合わせた治療法を提案しています。


図1 WHO3段階ラダー

それぞれの薬について、以下に説明します。

解熱鎮痛薬:「弱い痛み」に使う薬

「弱い痛み」の治療には、「解熱鎮痛薬」を使います。
解熱鎮痛薬には、①炎症を抑える作用のある「非ステロイド性消炎鎮痛薬」と、②炎症を抑える作用を持たない「アセトアミノフェン」の2種類があります。

表1 弱い痛みに使う 非ステロイド性消炎鎮痛薬とアセトアミノフェン
解熱鎮痛薬
  

非ステロイド性消炎鎮痛薬

がんの一般的な痛み、骨転移に伴う痛み、がんに伴う発熱などに使用されます。
しかし、胃潰瘍、腎機能障害、肝機能障害などの副作用を引き起こすこともありますので、強い胸焼け・だるさ・手足のむくみなどが生じたときは、早めにご相談ください。

アセトアミノフェン

がんの一般的な痛み、骨転移に伴う痛み、がんに伴う発熱などに使用されます。胃潰瘍、腎機能障害などの副作用を起こしにくいため、広く使用されています。非ステロイド性消炎鎮痛薬と合わせて使用することもできます。
まれに肝機能障害が生じることがありますので、強いだるさを感じたら、早めにご相談ください。

コデイン・トラマドール:「弱い~中くらいの痛み」に使う薬

痛みの強さの3段階のうち第2段階の「弱い痛み~中くらいの痛み」に対しては、主に、①コデイン、②トラマドールを使用します。場合によりこの段階を省略して、次の3段階(3.4の章参照)を使うこともよくあります。

表2 弱い~中くらいの疼痛に使う薬
コデイン・トラマドール

コデイン

古くからよく知られている薬で、痛みを抑える以外に、咳止めの効果もあります。

トラマドール

比較的新しい薬で、痛みを抑えるだけでなく、しびれやビリビリした感じを抑える効果もあるとされます。

コデイン・トラマドールの副作用

眠気・吐き気・便秘などの副作用が生じることがあります。
これらの副作用は、対応が可能です。困ったことがあれば、医師や看護師・薬剤師とよく相談しましょう。

モルヒネ・オキシコドン・フェンタニル:「中くらい~強い痛み」に使う薬

痛みの3段階のうち、第3段階の「中くらい~強い痛み」に対しては、主に、①モルヒネ、②オキシコドン、③フェンタニルなどの「医療用麻薬」がよく使われます。

表3 中くらい~強い痛みに使う薬「オピオイド」
モルヒネ・オキシコドン・フェンタニル

モルヒネ

最も古くから使用されている医療用麻薬で、世界的に標準的な薬です。
定期的に、ゆっくり吸収される薬(MSコンチン錠など)を使用し、痛い時の頓服薬として、速やかに吸収される薬(オプソ内服薬など)を使用します。のみ薬以外にも坐薬(アンペック坐薬など)や注射薬(モルヒネ注射液など)がありますので、状態に合わせて選ぶことができます。
腎臓の働きが低下している患者さんでは、眠気などの副作用が起こりやすくなります。

オキシコドン

モルヒネと似た性質を持つ薬で、国内で広く使われています。
定期的に、ゆっくり吸収される薬(オキシコンチン錠など)を使用し、痛いときには頓服薬として、速やかに吸収される薬(オキノーム散など)を使用します。注射薬(オキファスト注など)もあります。
モルヒネとは違い、腎臓の働きが低下している患者さんでも比較的安全に使用することができます。

フェンタニル

①皮膚に貼付する張り薬(貼付剤)、②舌の下や頬の裏に置いて粘膜から吸収させる製剤(口腔粘膜吸収製剤)、③注射剤があります。
貼付薬(フェントステープ、デュロテップMTパッチなど)は、のみ薬の使用が困難な方にも便利で簡単であり効果が長く続くという長所がある反面、微調整が難しいという短所もあります。
痛いときには、非常に速く効果が現れる頓服薬として口腔粘膜吸収製剤(アブストラル舌下錠、イーフェンバッカル錠)があるので便利です。
フェンタニルは、モルヒネやオキシコドンに比べ、吐き気・便秘・眠気などの副作用が少なく、また腎臓の働きが低下している患者さんでも安全に使用することができます。

モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルの副作用

程度の差はありますが、眠気・吐き気・便秘などの副作用が生じることがあります。
ほとんどの副作用は、対応が可能です。困ったことがあれば、医師や看護師・薬剤師とよく相談しましょう。

頓服薬の使い方

頓服薬とは

痛みが出た時に、そのつど、臨時で使う薬のことを、「頓服薬」、「頓用薬」、「レスキュー薬」と言います。
通常、速く効くタイプの薬(速効性のある薬)を使います。(表3参照)

頓用薬の上手な使い方

①急に強くなった痛み(予測できない痛み)に対して使います 
②痛みが強くなると予測される場合(食事・トイレ・着替えなどでからだを動かす時など)、前もって予防的に使います
③定期的に使う痛み止めの量の不足を補います(薬の必要量を調整している時など)

鎮痛補助薬について

痛み止めが効きにくい痛みのひとつに、「神経障害性疼痛」があります。(がんの痛みは我慢しないで!の2.3がんの痛みのメカニズム の項参照)
神経障害性疼痛に対しては、それまで使ってきた痛み止めと一緒に「鎮痛補助薬」を合わせて使用することで、痛みを改善できる場合があります。

表4 鎮痛補助薬
鎮痛補助薬について

「鎮痛補助薬」は、通常は痛み止めとしては使われない薬(例えばうつ病の薬、けいれんを止める薬、不整脈の薬など)ですので、驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、通常、うつやけいれんを治療する量より少ない量を使います。
しかし、それぞれの薬は、眠気やふらつきなどの副作用を起こすこともあります。医師や薬剤師に、その薬の使用目的や副作用などをよく聞いておくとよいでしょう。

私たちからのメッセージ

ご自身が使用されている痛み止めの種類や特徴については、ご理解いただけましたでしょうか?
当院では、がん治療に携わる医師全員が「緩和ケア研修会」を受講しており、がん性疼痛に関する知識を持っています。また、がん性疼痛、緩和ケア、抗癌剤治療・放射線治療などの専門の看護師もおります。
何かわからないこと、不安なことがありましたら、ぜひ、お近くのスタッフに声をかけ、ご相談ください。痛みが和らぎ、快適ながん治療を受けながら、あなたらしい生活を送れるよう、スタッフ一同応援致します。

執筆者紹介

田中 桂子(たなか けいこ)

がん・感染症センター都立駒込病院 緩和ケア科 部長

専門分野:緩和医療
資格:東海大学医学部卒 平成6年卒
日本緩和医療学会認定専門医
医学博士(筑波大学)
日本サイコオンコロジー学会認定CSTファシリテーター

参考文献

患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド 日本緩和医療学会 金原出版社

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