がんの骨転移の診断と対処をわかりやすく説明します

がんの骨転移の診断と対処をわかりやすく説明します

投稿者:放射線診療科(治療部)医員 清水口卓也

がんがもとにあった部位から血液を巡って骨に転移する「骨転移(こつてんい)」は、がん患者さんの間ではとても多い病態です。医学用語では「転移性骨腫瘍」とよばれ、骨を形成する細胞から発生する「原発性骨腫瘍」とは区別されます。

ここでは骨転移と診断された、患者さんやご家族、癌の骨転移について解説し、その対処法について放射線治療に携わる医師の立場から解説します。

1 骨転移とは

他の部位にがんができた患者さんで、がんができた場所から血流を巡って、骨に転移巣を作る病態です。がんと診断された時点から骨転移が判明する方もいれば、治療の経過中に発症する方もいます。近年ではがん治療の治療成績が向上し、長くなった治療経過の途中で骨転移が問題になる人も増えています。

がんを発症していない人の中でも、持続する体の痛みがあり、調べてみるとがんの転移だったということもしばしば経験します。(がんの既往がない若年の方では頻度が低い病態ですので、過度に心配することはありません。)

がんの原発巣別では肺がん、乳がん、前立腺がんなどで多く見られますが、全身のどの部位のがんでも骨転移を来たす可能性はあります。

骨転移は、骨にもともとある細胞が腫瘍化する病気(原発性骨腫瘍:骨肉腫、ユーイング肉腫、骨髄腫など)とは区別され、対処も異なります。

2 骨転移の症状

痛み

骨自体は痛みを感じることはありませんが、腫瘍が骨の外に進展し、骨を包む骨膜やまわりの神経が障害することで痛みを感じます。痛みがないこともあります。

骨折

骨が溶け、骨皮質が薄くなり体重や筋収縮の荷重に耐えられなくなると骨折に至ってしまう場合があります。(がんの転移による)病的骨折とよびます。

神経障害

骨の周りには重要な神経が走っていることが多く、その場所に対応した神経障害を生じることがあります。とくに脊椎(背骨:頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個と仙骨からなる)に病変ができて、その中を走る脊髄を損傷するような状況では下肢の麻痺などの重大な神経障害となることがあり、注意が必要です。

手や足が動かしづらくなった、などの場合には早めに担当医に相談しましょう。

高カルシウム血症

正常の骨では骨が溶けるのと、形成されるのが拮抗していますが、骨転移を有する患者さんでは骨が溶ける分が多くなり、血中のカルシウム濃度が上昇します。意識障害や口渇などの症状が出ることがあります。

3 骨転移の診断と必要な検査

骨転移の診断

がんの治療前、経過中痛みがあるときなどに、画像検査で診断を行います。画像検査では骨が溶けたようになる時と、骨が固くなる時の両方があります。がんの転移かどうかの判断が難しい時は骨の病巣に針を刺し、細胞を採取するなどして病理診断を行うこともあります。

単純写真

骨が溶けたような画像所見が認められることがあります。また、痛みが強い時などには骨折や骨の変形の程度を評価することもあります。

CT検査

他の部位と合わせて経過観察中にCTで骨の転移がわかるということがあり、骨転移が発見される契機としては一般的な検査です。

骨転移があっても溶骨、造骨がはっきりしない場合などもあり、小さい骨転移まですべてがわかるというわけではありません。

MRI検査

骨の内部の様子はX線検査では診断しづらく、その中の組織の状態を画像化することによりCTではわかりづらいものでも骨の病状が判断できることがあります。

骨シンチグラフィー

骨の材料に類似した放射性物質を注射して骨の代謝が活発に起こっている部位を画像化します。病気の広がりや、CTなどでは判断が難しい部位で代謝の情報を得るために行います。

4 骨転移に対する治療

放射線治療

次で解説します。

手術

がんの治療として骨に転移した病巣を取る手術を行うことは多くはありません。しかし、病巣が限局していて取りきれる範囲である場合など、特定の癌種の特定の状況では手術を行うこともあります。

それ以上に頻度が高いものにがんの転移による骨折(病的骨折)と脊髄圧迫に対する手術があります。

がんの転移が原因の骨折に対して、生活の質を保つための手術を行う場合もあります。脊髄の麻痺が切迫している場合には除圧術という、神経の圧迫を解除する手術を行うこともあります。

薬物療法

ゾレドロン酸、デノスマブ

骨を強くする薬として歯の骨への影響が出ることがあり、使用前に治療が必要な口腔内の異常がないか確認する必要があります。デノスマブを使用する際にはカルシウムが下がりすぎないよう、補充するなどの注意が必要になります。

鎮痛薬

痛みを伴うことが多いため、適切な鎮痛薬(オピオイド、消炎鎮痛薬、鎮痛補助薬など)を積極的に使用します。

がんに対する薬物治療

一部の病態ではがんに対する薬物治療がよく効果を示すので放射線治療よりも薬物による全身療法が優先されることがあります。

とくに乳がんや、前立腺癌ではホルモン療法や、化学療法の効果が期待される場合はそちらが優先されることがあります。

薬剤が効きやすい遺伝子変異をもつ肺がん、リンパ腫などでも、骨転移による症状が少なければ、まずそれぞれの腫瘍に対する治療を行うことがあります。

5 骨転移に対する放射線治療

外照射

従来からもっとも一般的に行われる治療です。痛みがある部位に放射線治療を行うと7割の患者さんで痛みの改善が期待できます。

副作用は治療をする部位出現します、治療の部位によって異なりますが一般には強い放射線治療を行うことは少ないので副作用も重大なものは稀です。

これまでは10回(合計30グレイ)の治療を行うのが一般的でしたが、最近では病状に応じて5回(合計20グレイ)や1回(8グレイ)で治療される場面も多くなりました(痛みをよくする効果は同等とされています)。

定位照射

放射線を病変がある部位に限局し、その分強い治療を行うことでより高い効果を得ることを期待するというのが定位照射の考え方です。

従来は肺や脳の腫瘍によく用いられてきましたが、最近では骨にも定位照射を行う試みがなされています。転移の病変が1個だけの時や、普通は治療が難しい2回目の照射などに用いています。

α線による治療

前立腺がんの骨転移を有する患者さんを対象にした薬剤です。Ra223(ラジウム223)という放射性物質を注射します。毎月1回、6か月間にわたって使用することが一般的です。日本では最近承認された薬剤で、痛みをよくするだけでなく、その後の治療成績も改善したというデータがあり今後使用されることが多くなる可能性があります。

保険適応上はホルモン療法が効かなくなって、骨転移が問題になっている方が治療の適応です。

β線による治療

Sr89(ストロンチウム89)という注射薬を1回注射します。

注射した薬剤がカルシウムと同じような動態を示すので、骨に集積しそこで放射線を放出することで症状がよくなるというメカニズムです。

副作用には骨髄抑制(白血球、血小板、赤血球が減少する)などがあります。

6 骨転移キャンサーボード

駒込病院では骨転移を有する患者さんにより質の高い治療を行うための工夫として、2015年より骨転移キャンサーボードを開催しています。

整形外科、骨軟部腫瘍科、リハビリテーション科、緩和ケア科、放射線科から、医師、看護師、薬剤師などのスタッフが集まり、第一、第三火曜日にカンファランスを行っています。

7 まとめ

患者さんからよく質問いただく、がんの骨転移に関する診断、治療の情報をまとめました。診断、各治療ともいくらか進歩している部分があり、それらを組み合わせてできるだけ生活の質を落とさないように丁寧に対処していくことが必要です。

骨転移と診断されて調べられている方は、不安が多いと思います。骨転移は問題がスッキリ解決することは少なく、症状がある中でどのように生活をしていくか相談することも多くあります。がんとその骨転移の診療に慣れ、がんの病状の全体像をみわたせる主治医とよく対話することが大切だと思います。

8 役に立つリンク


執筆者紹介

清水口 卓也(しみずぐち たくや)

こまごめコラム執筆者
がん・感染症センター都立駒込病院 放射線診療科(治療部)医員
富山大学 平成21年卒
専門分野:放射線腫瘍学(婦人科がん、乳がん、肝がん、悪性リンパ腫)
資格:日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医、日本医学放射線学会会員、日本放射線腫瘍学会会員、第1種放射線取扱主任者、検診マンモグラフィー読影認定医
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