転移性肺腫瘍の診断と外科治療について

転移性肺腫瘍の診断と外科治療について

投稿者:呼吸器外科 部長 堀尾 裕俊

転移性肺腫瘍とは?

肺の悪性腫瘍には肺そのものから発生するがんと、他臓器のがん(これを原発巣と呼びます)が肺に転移したものがあります。前者を(原発性)肺癌、後者を転移性肺腫瘍と呼びます(図)。肺は肝臓とならんで転移をきたしやすい臓器であり、ほぼすべての臓器のがんが転移する可能性があります。よってすべてのがんの治療前および治療後は、肺への転移があるのかどうかを事前に、あるいは定期的にチェックする必要があります。

転移性肺腫瘍の診断

画像診断

肺病変のチェックのためには通常レントゲン写真やCT検査が行われますが、より小さな病変を早期に発見するにはCT検査が優れています。それぞれのがんの悪性度や進行度(病期、ステージとも言います)にもよりますが、通常治療後5年までは年1~2回のCT検査を受けることが望ましいと思われます。また、PET(陽電子放出断層撮影)検査も診断の助けになることがあります。

画像所見

転移性肺腫瘍の画像所見は様々で、単発性の“しこり”で発見されるもの、大小さまざまな“しこり”が多発するもの、それが片方の肺のみならず両方の肺に多発するものがあります。特殊な場合として気管支や肺内の血管に沿ったリンパ管にがんが転移すると、それらの構造が太く見えてくること(これをがん性リンパ管症といいます)もあります。

腫瘍マーカー

各臓器のがんから作られた特有な物質が血液中に放出されることがあり、これを腫瘍マーカーと呼びます。採血してこれを測定することによりがんの存在や再発を推定できることがあります。臓器特異性の高いマーカーとしてはCA15-3(乳がん)、PSA(前立腺がん)、AFP/PIVKA-II(肝細胞がん)があり、特異性の高くないマーカーとしてはCEA(消化器がん全般、乳がん、肺がん、甲状腺がん、卵巣がん、子宮がん)、CA19-9(消化器がん全般)があります。ただし、特異性の高くない腫瘍マーカーでも治療前に高値であったものが治療後に正常値になれば、その後の値の変動が再発の指標となりうることを意味しているため、画像診断と組み合わせることにより肺転移かどうかの判断の有力な情報となり得ます。

肺生検

先ほど述べたように肺には(原発性)肺がんができます。またそれ以外にも良性病変(抗酸菌や真菌などの感染によってできる肉芽腫や炎症性腫瘤・瘢痕、肺内リンパ節、良性肺腫瘍など)ができることもまれではありません。よって、他臓器のがんと診断され、その治療前のCTで肺病変が見つかった場合や、治療後の経過観察目的のCTで肺病変が見つかった場合に時として肺転移かどうか判断に迷う場合があります。このような場合には組織・細胞診断が必要となることがあり、気管支鏡検査(のどや気管の局所麻酔で実施、外来で実施可能)、CTガイド下経皮生検(胸部あるいは背部の局所麻酔で実施、1泊入院が必要)、胸腔鏡生検(全身麻酔で実施、数日間の入院が必要)が患者さんの状態、肺病変の数・大きさや存在部位によって選択されます。

転移性肺腫瘍の外科治療

転移性肺腫瘍の治療は原発巣の性格(組織型や分化度など)や進行程度によって異なります。肺病巣が無数ある場合は抗がん剤による全身化学療法を行うことが検討されます。ではどのような場合が外科治療(手術)となるのでしょうか?

手術適応

原発巣のがんの性格や肺転移の個数・部位、患者さんの全身状態(合併症や年呼吸機能など)によって一概には言えませんが、(原発性)肺がんとの区別が必要な場合には絶対適応となります。また原発巣がコントロールされており、肺のみに転移病巣があること、肺転移の個数が少ないこと(これも何個までとの上限は実際ありません、外科医が完全に取り切れると考えたもの)、術後の肺機能が生活を行っていくうえで十分に保たれることが分かっている場合には手術適応となります(表)。抗がん剤が比較的よく効くがん(乳がんやリンパ腫など)は確定診断をつけるという目的以外は手術の適応になりません。また、いろいろな合併症(重度の心不全、腎不全、肝硬変、認知症など)があって、全身麻酔そのものに耐えられない場合も手術適応とはなりません。

術式

転移性肺腫瘍のほとんどが胸腔鏡手術により可能です。肺病変の大きさ、個数、存在部位より切除範囲は部分切除(複数の場合もあり)、区域切除、肺葉切除となります。また全身状態が許せば左右両側同時切除や複数回切除も可能です。

まとめ

転移性肺腫瘍は原発巣の性格や肺病変の個数により、その治療がさまざまであり、その診断や治療は担当医のみならず、呼吸器内科及び外科、放射線診療部、病理科などとの連携で方針を決定する必要があります。担当医から呼吸器科受診を勧められた場合にはぜひ受診いただき、ご相談ください。

図 日本呼吸器学会ホームページより抜粋

表 転移性肺腫瘍の手術適応基準
・原発巣がコントロールされている、あるいはコントロール可能であること
・肺転移病巣が取り残しなく、完全に切除可能であること
・肺以外には転移病巣がないこと、あるいはコントロール可能であること、また肺切除後に十分な肺機能が保持されること

執筆者紹介

堀尾 裕俊(ほりお ひろとし)


がん・感染症センター都立駒込病院 呼吸器外科 部長
専門分野:呼吸器外科一般 特に肺・縦隔悪性腫瘍の診断と治療
資格:日本外科学会指導医・専門医、呼吸器外科専門医、日本胸部外科学会指導医・認定医・評議員、日本呼吸器外科学会指導医・評議員、日本呼吸器内視鏡学会評議員、気管支鏡指導医・専門医、日本呼吸器学会指導医・専門医、日本内視鏡外科学会評議員、日本肺癌学会評議員、日本がん治療認定医機構暫定教育医・がん治療認定医、日本旅行医学会認定医

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