大腸がんの早期発見のメリットと検査法を解説します
~大切な人にも教えてあげよう~

大腸がんの早期発見のメリットと検査法を解説します<br>~大切な人にも教えてあげよう~

投稿者:がん・感染症センター都立駒込病院 大腸チーム
文 放射線治療部 清水口卓也
監修、画像提供 消化器内科部長 小泉浩一  医員 高雄暁成

大腸がんの早期発見

早期がんと進行がんはこれだけ違う

難しい話の前にまずは早期がんと進行がんの違いを見てみましょう。

早期がん 進行がん
こまごめコラム 大腸がん早期治療 見た目 こまごめコラム 大腸がん早期治療
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大きな病変で、とくに肛門に近いと血便がきっかけになることもあるが、ほとんどの場合は症状なし、検診の便検査などを入口に、大腸内視鏡検査でないとみつからない。 症状 直腸がんでは血便(便に血が混じる)や便通の異常(だんだん便秘がひどくなる、排便しても出きらず出ても少量でまたすぐにトイレに行く、など)のこともあるが,奥の方のがんでは症状がないことがしばしば。貧血の原因を調べるうちに見つかることも。進行すると、腸閉塞になり,おなかが張ったり,戻したり,という症状となることも。
内視鏡で切除
小さいものは入院せず外来で切除できることも。
大きなものでは数日入院する場合も有り。
治療 手術
入院期間7~14日
肛門や肛門に近い場所のがんは人工肛門が必要になることも。
抗がん剤治療が必要なことやがんを手術で取れない場合もある
再発、転移の可能性は低い。 治療成績 肝臓や肺へ転移することもある。大腸がんで命を落とす方のほとんどは進行がんの状態で発見されている。

症状がでない早期がんのうちに治療することの重要性がひと目でご理解いただけたと思います。

解説編

Q.大腸ってどんな臓器ですか?

A.大腸は、食道、胃、小腸に続く消化管の後半部分にあたる臓器で、肛門に至るまでの間のおよそ1.5メートルの長さの臓器です。
大腸は細かく区分されて名称がついています。右下腹部に小腸とのつなぎ目である回盲弁がある盲腸があり、そこからが大腸がはじまります。盲腸の次は結腸、それが前から見て時計回りにお腹を回り、肛門に近いところから20センチぐらいは名前が変わって直腸とよばれます。最後は肛門につながります。
こまごめコラム 大腸がん早期治療
盲腸+上行結腸+横行結腸+下行結腸+S状結腸=結腸
結腸+直腸=大腸
の関係です。
そのどの部分もがんができる可能性はありますが、多いのは出口に近い直腸、S状結腸のがんです。便による刺激が要因の一つと考えられています。

Q.大腸がんってそんなによくある病気なの?

A.とても多い病気といえます。
①数あるがんの種類の中でも特に多い、②中年でも多く、高齢になるほど多い、③昔と比べて多い
データで見てみましょう。
国内における大腸がんによる死亡者数は年間50000人でがんの中では肺がんに次いで2番目に多い部位です。日本人の4-5%が大腸がんで亡くなる計算です。罹患数(1年間で大腸がんと診断される人の数)はもっと多くて、133000人です。日本人の10人に1人が生涯のうちに大腸がんと診断されることになります。
下のグラフから読み取れるように、40代ぐらいから大腸がんは増え始めます。働き盛りの方の間でも多いがんです。また、30年前と比べて大腸がんに罹患される方は2-3倍に増えています(青、赤の実線)。背景には食の欧米化が関与しているといわれています。また検診が増えて早期に見つかるために、大腸がんと診断される人の数が増えている可能性もあります。
こまごめコラム 大腸がん早期治療

大腸がんの年齢別罹患率 国立がんセンター がんの統計2016より

Q.良性のポリープ、早期がん、進行がんの境目は?

A.大腸のポリープという言葉を聞いたことはありますか?ポリープとは出っ張り,いぼ,など,“形”を表す言葉です。マッシュルームや椎茸などキノコのような形を思い浮かべてくださればいいでしょう。ポリープには,良性の腫瘍である「腺腫」,悪性の腫瘍である「がん」,そして腫瘍ではなく全く良性の「過形成性ポリープ」などが有り、いろいろな質のものが含まれます。これらは性質を表す言葉ですね。
ポリープの大多数は良性の腫瘍である腺腫なのですが、がんの一部も含まれことにご注意ください。この「腺腫」の一部は放っておくと大きくなり、次第に性質が変わって、悪性の「がん」に育っていく可能性があります。腺腫と早期がんは別のものではなく,腺腫の中の細胞の一部ががんに変化し、それが育つ、腺腫の中のがん「腺腫内がん」の状態になりますので、腺腫はがんの予備軍,あるいは前がん病変という立場なのです。
がんの成分と腺腫の成分は見た目では区別がつかず顕微鏡でみてみないとわからないないことがあり、大きさも性質を予想する材料です。腺腫が大きくなるに従い、一部ががん化している頻度が高くなります。5mmのもので0.5%、6-9mmのもので3.3%、1㎝を超えると30%ほどになります。「がん」になる前に取り除くのが理想なので、腺腫と思われるポリープでも1cm超えたら是非とるべきで、5mmを超えたらとった方が良い、5mmより小さければ様子を見てもいいか、といったところです。5mmより小さいポリープは比較的よく見かけますが、がんに育つ心配が少ない一方で、ポリープをとる治療で出血などの副作用の心配があるためです。
小さいポリープをとらないとしても,放っておいて良いわけではありません。年単位で徐々に大きくなるものがあり、大きくなればがんを伴うようになりますから、2-3年後には成長の度合いを確認し、大きくなっていればとった方が良いのです。細胞の性質が変わって、早期がんになると、発育の速度は高くなると考えられ、年単位ではありますが経過とともに大きくなり、進行がんへと進展していきます。
「がん」になると、ただ増殖するにとどまらず、他の細胞をかきわけて組織にしみこみながら成長する性質を兼ね備えるようになります。キノコのような整った形から、だんだん腸の深いところに浸みる様に発育し、最終的には火山の火口のような「いかつい」形に変わっていきます。大腸の壁の筋肉の層まで達すると「進行がん」とよばれるようになり、手術で取り除くほかなくなっていまします。

腺腫 早期がん 進行がん
俗にいわれる「良性のポリープ」のうちの一部(腺腫でないポリープもある) 「悪性のポリープ」と説明されることもある。  
良性なので、転移や、浸潤することはない。
がんの予備軍。
頻度はたかくないものの、リンパ節などに転移することもある。 がんがリンパ節に転移する頻度が高い、肝臓などの臓器に転移していることもある。
2-10年で早期がんになってしまうものもあるし、生涯にわたりがんにならないものもある。 早ければ1-2年で進行がんになってしまう 進行がんになると半年から2年ぐらいで症状が出ます。

Q.大腸がんが進行するスピードは?早期発見は可能?

A.他のがん以上に成長の過程が研究され、一般的には数年以上の経過でゆっくり増大し、検査の方法もいくつかあることから、早期発見の対策が取りやすいがんであると考えられています。
若い人にがんが少ないことから推測されるように、がんはゆっくり時間をかけて発生し、大きくなります。DNAに傷がつき、細胞の性質がかわると増殖に歯止めが利かずに大きくなり腫瘍化します。さらに周囲に広がりやすくなる性質を獲得すると、腸の壁の中にしみこんでいき、転移を来たすことになります。大腸がんは、その成長の過程がよく研究されています。前出の表にもあるように、全体の経過は短くても数年~10年ぐらいかかるとされています。(例外もあります)
その途中の段階で見つけて取り除くのが、早期発見、早期治療ということになります。

Q.早期発見のための検査の種類は?

A.便潜血検査や内視鏡検査が一般的な方法です。

①便潜血検査を受ける

大腸の腺腫やがんは出血するため、便に血が混じっているか検査することで、その病気の有無を調べることができます。
毎年検診をうけることで大腸がんの死亡率が下がることが知られています。ほとんどの企業、自治体の検診に組み込まれ、自己負担なしかわずかな負担で、気軽にできる対策です。特に40歳を過ぎたらぜひ機会を逃さず利用してください。
また、再検査といわれた方は、早期がんで発見するチャンスですので面倒がらずに精密検査を受けてください。これがとっても大事です。

②内視鏡検査を受ける

便潜血は有効な検査ですが、出血しないポリープや早期がんもあるため万能ではありません。内視鏡は小さい腺腫や早期がんの段階で見つけられるので、早期発見にはもっともふさわしい方法の一つです。特にがんの予備軍である腺腫ができた人は、お勧めされる間隔で受けましょう。
ただし、便の検査と違い,多少は体への負担もありますし、時間、費用もかかります。検診での寿命の延長効果がまだはっきり証明されておらず、すべての人が受けるべき検査であるとは言い切れないため一般検診にはまだ組み込まれていません。
40-50歳の間で一度人間ドッグで大腸内視鏡検査を一度受けるのもお勧めです。内視鏡検査なら、がんのでなく腺腫の有無もわかりますから、腺腫の出来やすさがわかります(その年齢で腺腫が多くある場合は腺腫ができやすい、大腸がんのリスクが高い体質と考えられます)。それに応じて、その後は実施した消化器内科医と相談してちょうど良い間隔で検査を受けるとよいでしょう。

③CTコロノグラフィー、カプセル内視鏡

腸の中のことを観察するには、内視鏡を肛門から入れて直接観察する方法しかなかったのが、技術の進歩でCTや、無線で体内から画像を送信するカプセルを飲み込む検査で代用する方法が開発されました。ただし、下剤の処置を行わないといけないのは変わらず、それぞれデメリットもあり、対象となる患者さんや実施する医療機関が限られているのが現状です。

④最先端の研究

尿や血液,便に含まれる微量の遺伝子などを測定して大腸がんを見つるという研究は多くなされています。
今後の可能性は期待できますが、現段階では研究としての側面が強く,大腸がんを見つけ出す確実な方法としてお勧めできる段階ではないと考えています。

⑤PET検査は有効か?

がんの早期発見に関心の高い方の中には、PET検査を受けている方もいらっしゃいます。進行したがんでは陽性になることは多いですし、実際、PET検査で疑われ、早期大腸がんや腺腫が見つかることはあるのですが、逆に全てのがんを見つける能力(感度)は十分とはいえない、とされています。PET検査を受けているから大腸がんについては安心、ということはありません。大腸がんについては便潜血検査や、内視鏡検査を組み合わせるのがおすすめです。

Q.検診受診率の現状は?

A.受診率は少しずつ上がってきましたが
日本国内での大腸がん検診受診率は、最近10年間では上昇傾向ですが、いまだ40%台と満足できるものではありません。受診していない半分以上の方は、早期発見のチャンスを放棄している状況と考えられます。

<40-69歳大腸がん検診受診率(%)の推移2007年から2016年>

こまごめコラム 大腸がん早期治療


国民生活基礎調査による推定値、がん情報サービスデータをもとに作成

早期大腸がんの治療

早期がんの内視鏡治療

早期がんのうち、表面にとどまっているもの、リンパ節転移の心配が少ないものはおなかを切らずに、内視鏡で取り除いて治療することができます。
大きさ2cm程度までは粘膜切除術(EMR)で切除します。1cm程度までの大きさで、切除後の出血などのリスクが少ないものは外来で治療を行うことも可能です。

こまごめコラム 大腸がん早期治療

(左)内視鏡での観察 (中)腫瘍を浮かせたところ (右)切除後

病変が大きい場合,特に2cmを超えるものには病巣を剥ぎ取るような,粘膜切開剥離法(ESD)で切除します。入院が必要ですが、期間は2-5日程度です。体への負担は軽く、治療の翌週には概ね普段通りの活動が可能です。
こまごめコラム 大腸がん早期治療

病理診断とチーム医療

がんを取ることで治療が終わりではありません。大事なのは病変が確かにがんなのか、がんであれば腸の壁のどの程度まで進んでいるのか、腸の壁の中の細かい血管やリンパ管の中にがん細胞がいるのか、がん全体をきちんと取り切れているのか,などを評価してその後の方針を考えることも重要です。
切除されたがんは,病理科に送られます。病理科の医師は患者さんの前には現れず,毎日顕微鏡を覗いてがんの診断をしています。この病理診断によって、内視鏡治療で治療が完結できると判断されれば治療は終了ですが、腸の壁の外側のリンパ節までがん細胞が拡がっている確率が高いと判断されれば追加の外科治療(手術)をお勧めすることもあります。
こまごめコラム 大腸がん早期治療

ポリープ様の病変でがんの部分はひとかたまりで取り切れていますが,青で囲った部分は2番目の層である粘膜下層にがん細胞が拡がっているので,そばのリンパ節にがん細胞が転移している可能性を考えてリンパ節を取り去るための追加外科切除をお勧めする病変です。

がんの拠点病院では内科医、外科医、病理医をはじめがんの診療に関わる様々な部門のスタッフが集まって一人の患者さんの診療方針決定を支えています。
駒込病院でも「大腸がんキャンサーボード」を毎週開催し、診断や治療の組み合わせの議論を重ね、医療の質を高めるようがんばっています。

まとめ

大腸がんはとても多くの方がかかる病気です。がんの予備軍である「腺腫」や「早期がん」の段階で見つけることができれば治療は楽におわり、成績も良好です。進行大腸がんとして見つかる方はいまだに多いですが、大部分は数年前には小さい「ポリープ(腺腫)」で、切除のチャンスがあったと考えられています。
私たちは大腸がんが進行がんとして見つかって、「検査しておけばよかった」と後悔される方が少しでも減ることを願っています。まずは職場、自治体の健康診断をしっかり受けることから始めましょう。人間ドッグでオプションとして選べれば内視鏡を受けてみるのもよいでしょう。
本稿で大腸がんの早期発見の重要性はご理解いただけましたか?もし共感していただけたら、次は身近にいる大切な人にもお勧めしてみてください。

参考文献:

大腸ポリープ診療ガイドライン2014
患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014

当院は、他の病院でがん、あるいはその疑いといわれた、また,健康診断で便潜血検査が陽性となり要精密検査とされた、などの理由で紹介状をお持ち方の診療を基本としています。

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執筆者紹介

小泉 浩一(こいずみ こういち)

こまごめコラム執筆者
がん・感染症センター都立駒込病院 消化器内科 部長
専門分野:大腸がんの診断と内視鏡治療
資格:日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・評議員、厚生労働省臨床修練指導医
駒込病院 消化器内科のページ

高雄 暁成(たかお あきなり)

こまごめコラム執筆者
がん・感染症センター都立駒込病院 消化器内科 医員
資格:日本内科学会認定医
駒込病院 消化器内科のページ

清水口 卓也(しみずぐち たくや)

こまごめコラム執筆者
がん・感染症センター都立駒込病院 放射線診療科(治療部)医員
富山大学 平成21年卒
専門分野:放射線腫瘍学(婦人科がん、乳がん、肝がん、悪性リンパ腫)
資格:日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医、日本医学放射線学会会員、日本放射線腫瘍学会会員、第1種放射線取扱主任者、検診マンモグラフィー読影認定医
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